これで新型コロナウイルスの感染拡大を抑えられるのだろうか。

 菅義偉首相と東京都の小池百合子知事は、政府の観光支援事業「Go To トラベル」の東京発着の旅行について、見直しの対象とすることで合意した。

 ただし、東京全体の除外ではなく、12月17日までの間、重症化リスクの高い65歳以上の高齢者や糖尿病など基礎疾患のある人に限って利用自粛を呼び掛ける内容だ。

 政府は感染急増が顕著な札幌、大阪2市に到着する旅行の予約受け付けを既に停止し、12月2日以降に現地へ到着する予約済み旅行も割引を無効にした。両市を出発する住民の旅行についても年齢を問わず自粛を求めている。

 これらの対策に比べ、今回の合意は明らかに腰が引けている。これまで首相と小池氏は責任を押し付け合って判断を先送りにしてきたが、たどり着いた内容がこれでは首相の「感染拡大を何としても阻止することで一致した」という言葉も説得力を欠く。

 東京都内は11月中旬以降、新規感染者数が500人を超える日もあり、感染が急拡大している。都は酒類を提供する飲食店の営業時間を午後10時までとする要請も始めているが、重症者の増加で医療機関も逼迫(ひっぱく)感を増している。

 東京は来訪者、出発者のいずれも国内最多規模だ。GoToトラベル事業全体への影響は大きく、経済活動にダメージとならないよう慎重になるのは分かる。

 だからといって、不十分な対策で感染に歯止めをかけられなければ、逆に経済の悪化につながりかねない。人口が密集する大都市・東京だからこそ、今は感染抑止を優先する政策が必要だ。

 小池氏によると、首相との会談で高齢者や基礎疾患がある人のGoTo利用停止を含む案を示したが、対象年齢や疾患の有無を把握する難しさから自粛要請で決着したという。

 だが、そもそも高齢者や基礎疾患がある人たちは感染に注意しながら生活しており、移動制限しても感染拡大抑止の効果は限定的にならざるをえない。

 むしろ、自粛対象外となった人に旅行をしても大丈夫という誤ったメッセージを与え、無症状の若い感染者が無自覚のまま感染を広げることにならないか。

 人の移動を抑えるために、機動的にGoTo利用制限をするのはやむをえないだろう。国も都も除外対象の拡大をためらうべきではない。