■「泣きながら拝む女性も」

 清水寺での奉納は、夏木の夫でパーカッション奏者の斉藤ノヴが京都市出身でもあり、縁が生まれたという。前衛的な舞踊と寺院との組み合わせは異例とも言えるが、「奉納が終わって観客を見たら、泣きながら手を合わせている女性がいて、やって良かったと思いました」と、初回から声明で参加している清水寺の森清顕執事補は振り返る。

 今回はコロナ禍のため、初めて無観客での事前収録という形を取った。「やりにくい面もありましたが、配信で世界中に届けられる面もある」と夏木は前向きに捉える。

■感謝と怒りの浄化込めて

 黒い衣装に身を包み、白化粧を施した夏木をはじめとする一団は、不思議な神々しさを漂わせていた。プレーヤーたちは無言で太鼓の音とともに動き、時に止まる。その姿は、混迷の現代でもがき苦しむ人間の戯画のようでもあり、また、長い時の流れを圧縮した草木の動きのようでもある。極めて抽象度の高い舞踊が、見る者の心を激しく揺さぶってくる。

 身体表現は、基本的に夏木が創作しているという。

 「基本は感謝を奉納している。同時に、何かしらの怒りを浄化するという思いを込めました。今回は特に、この状況で、これまで今までのようにライブの仕事もできず、リモートばかりで、何となくもんもんしている気持ちもぶつけました」。緑色の照明には、苔で負の感情を鎮める意味を込めたという。

 俳優として数々の映画やドラマに出演してきた夏木が、ここまで身体表現にこだわる理由とは何なのだろう。

 「演劇だと、どうしても言葉に頼ってしまう。それで身体表現の可能性に夢中になって、苦しいんですけど、はまってしまった」

 選択肢として中止もありえた状況下で、配信でもあえて挙行したのは夏木らしいサービス精神でもあった。「いつもみなさんの代表で奉納させていただいているという気持ち。だから、今回はなかなか実際の旅が難しい中で、京都を旅する気分で、清水寺での奉納を体感してほしい」