料理を出す「いしちゃん」こと石川さん。「わいわいできる場をつくっていきたい」と話す(京都府南丹市日吉町殿田)

料理を出す「いしちゃん」こと石川さん。「わいわいできる場をつくっていきたい」と話す(京都府南丹市日吉町殿田)

随所に手間をかけたギョーザやおむすびなどの料理

随所に手間をかけたギョーザやおむすびなどの料理

 名物のまん丸いおむすびは、店主の人柄を表しているかのようだ。なじんだ居場所のような空気が流れる店内で、おむすびと一工夫が光るギョーザや唐揚げをほおばれば、おなかも心も満たされる。

 京都府南丹市日吉町の「キッチンあまわか」。「いしちゃん」こと石川剛(つよし)さん(40)が2018年の春から切り盛りする。出身地である三重県の中華や焼き鳥、しゃぶしゃぶなどの店で腕を磨いた。

 「店を持ちたい」と考えていたところ、知人を通じて、南丹市日吉町の「ビジネスホテルひよし天若の家」が料理人を探していると知った。澄んだ空気に触れ、「ここ、いいな」と直感し、移住しての挑戦を決めた。

 「大丈夫?」と親に心配されたほどの立地環境ながら、近くの日吉ダムを訪れる観光客らが引きも切らない。

 湧き水で炊いた地元産のキヌヒカリを優しく握った野球ボール大のおむすびが看板だ。口に入れるとほろりとほどけ、かむほどに甘みが広がる。皮から手作りしたギョーザや、黒米の甘酒などを使って味付けした唐揚げのファンも多い。同市美山町の健康なニワトリが産んだ卵を使っただし巻きも外せない。

 外国人観光客と意気投合して同町のかやぶきの里を案内するなど、親しみやすいキャラクターも人を引きつける。「しゃべりやすい雰囲気はあるのかも」と笑う。食べた人の喜ぶ顔を間近で見られるのがやりがいという。「こっちに来てよかった」と実感している。

 料理人としてだけでなく、Iターン者としても動く。新型コロナウイルス禍で田園回帰の流れが強まる中、移住の相談に乗り、魅力を伝える。「日吉は不便なようで、生きていく上で欠かせない食に恵まれている。田舎に住みたい人が集まれるような場づくりをしたい」と語る。

 おむすびは「お結び」。大きく厚い手で米粒をくっつけていくように、人と地域も結びつけていく。