古代ギリシャと五輪をコミカルに描いた「別冊オリンピア・キュクロス」。右から2人目が主人公デメトリオス

古代ギリシャと五輪をコミカルに描いた「別冊オリンピア・キュクロス」。右から2人目が主人公デメトリオス

監督の藤井さん(大阪市北区のスタジオ)

監督の藤井さん(大阪市北区のスタジオ)

古代ギリシャと五輪をコミカルに描いた「別冊オリンピア・キュクロス」の一場面

古代ギリシャと五輪をコミカルに描いた「別冊オリンピア・キュクロス」の一場面

 東京五輪・パラリンピックは翌年に持ち越しとなり、2020年も終わろうとしている。そんな中、五輪をテーマとしたテレビアニメ「別冊オリンピア・キュクロス」が11月に最終回を迎えた。近代五輪が開かれた1964年前後の東京に、古代ギリシャ人がタイムスリップする「比較文化コメディ」の原作を下敷きに、現代の五輪が抱える課題への風刺も効いた異色作だ。監督を務めたのは、大手広告会社の電通出身で、京都や滋賀ゆかりの広告作品も多く手がけた藤井亮さん(41)。スポーツや五輪について、作品づくりを機に考えたことを聞いた。

■主人公は古代ギリシャ人、原作は「テルマエ・ロマエ」のヤマザキマリさん

アニメの舞台は、古代五輪が開かれていた紀元前のギリシャ。主人公は、トリトニアという村に住む青年デメトリオス。オリンピアで開かれている五輪に匹敵する競技会を開こうとする村長にむちゃ振りをされながらも、開催を目指す物語だ。

 ―監督を受けられた経緯は。

 「2020年東京五輪に合わせ、原作を映像化したら面白いのでは、と始まった企画です。昨年、プロデューサーから話が来ました。原作はシリアスで(64年東京五輪マラソン銅メダリストで後に自死した)円谷幸吉さんの話なども扱っています。これを1話5分(計24回)のアニメにするのは無理だ、と最初は思いました」

 「そのうち、古代ギリシャの石こう像のような世界を粘土を材料にしたクレイアニメとして、64年の日本を紙芝居風のアニメで表現したら面白いなと思いつきました。原作とずれる『別冊』ならこういうものが作れますよ、と提案して、ヤマザキさんも面白そうだなと乗ってくれました」

■「健全な精神は健全な肉体に宿る」って本当かな?

 古代の場面では、主人公たちが資金集めで募った広告主から細かな注文をつけられたり、ほかとかぶらないロゴマークを作ろうと頭をひねったり。ドタバタ劇をユーモアたっぷりに描いた。

 ―古代ギリシャと昭和の日本のオリンピックについて、面白いと感じた点は。

 「現代の五輪はお金のためにやっている部分があり、スポンサーの事情や開催側の事情もある。出場する側も、純粋なスポーツに対する喜びだけでなく、名誉欲もあるんじゃないかなと思います。『昔はよかった』という話を作ることになるのかと思ったのですが、古代オリンピックを調べると(開催地オリンピアがある)エーリス地方の人たちが利権を握っていたり、スポーツと関係ない、彫刻家や吟遊詩人がオリンピックで名前を売ろうとしていたり。なんだかんだ言って昔も一緒で、それが面白いなと思いました」

 「もともと、『健全な精神は健全な肉体に宿る』的な思想は本当に正しいのかな、という思いもありました。僕自身は中学、高校でハンドボールをしていて、厳しい部活での経験がきつすぎて集団スポーツが嫌いになってしまいました。格闘技などは今も好きです。野球部やサッカー部のエースが品行方正かといえば、そんなことはない。会社に入ってからも、スポーツ系の広告の撮影で関わる選手がみんな健全な魂を持った良い人かといえば、そうでもないですし。スポーツをことさら神格化する必要はないと思っています」