2020年夏の東京五輪のマラソンと競歩の会場が、札幌市に変更される見通しになった。

 暑さ対策が理由という。だが、東京の暑さは招致段階から懸念されていた。五輪の開幕まで10カ月を切る中、異例の事態だ。

 東京五輪のマラソンは新国立競技場を発着とし、競歩は皇居外苑での開催が決まっていた。酷暑を避けるため、当初計画から競技時間も練り直し、マラソンは午前6時、男子50キロ競歩は午前5時半のスタートに変更している。

 国際オリンピック委員会(IOC)は会場変更の理由を「選手の安全」とする。東京とよく似た高温多湿のカタール・ドーハで9~10月に開かれた陸上世界選手権では、棄権者が続出した。特に女子マラソンは深夜の開催としたにもかかわらず、出場68選手中28人が棄権。完走率は同選手権で過去最低だった。

 そもそも、夏季五輪の開催時期を真夏に指定したのはIOCだ。背景には、IOCに巨額の放映権料を支払っている米テレビ局の存在がある。他の人気スポーツシーズンと五輪が競合して、視聴率が下がるのを嫌っているためだ。

 ドーハでの棄権者続出でようやく危機感を高め、会場変更で責任回避をしたといわれても仕方ない。本当にアスリートファースト(選手第一)の視点に立ったのか疑問だ。

 会場の変更先がなぜ札幌なのかについても説明がいるだろう。

 確かに札幌には冬季五輪や毎年8月の北海道マラソン開催の実績はある。だが、近年はマラソン大会を開き、成功を収めている自治体は他にもある。

 五輪招致には国内外の都市が多大な労力をかけている。IOCの意向一つで開催地が決まるならば、今後の招致活動にも影響を及ぼしかねない。

 会場変更となれば、コース設定や警備、宿泊場所確保などに相当な困難が予想される。ボランティアも一から確保する必要があるかもしれない。マラソンについては、すでにチケットも販売されている。

 IOCは大会組織委員会や国際陸上競技連盟はもとより東京都や札幌市と連携を深め、負担軽減へいっそう知恵を絞る必要がある。

 選手の安全が最優先なのは当然だが、その選手もこの時期の会場変更提案に戸惑いの声を上げている。懸念を拭い去り、役員やボランティア、観客にも快適な大会にしなければならない。残された時間は短い。