親鸞賞の記念品を受け取る朝井まかてさん(右)=京都市山科区

親鸞賞の記念品を受け取る朝井まかてさん(右)=京都市山科区

 日本人の精神文化に根ざした文芸作品に贈られる親鸞賞の授賞式と記念シンポジウムがこのほど、京都市山科区の東山浄苑であった。長編小説「グッドバイ」で第11回受賞者に選ばれた朝井まかてさんが「栄えある親鸞の名を冠した賞を、カタカナのタイトルの作品でいただけたこと、本当にうれしく思います」と喜びを語った。

 本願寺文化興隆財団が主催する同賞は今年で20周年。受賞作は、幕末の長崎で異国を相手に茶葉交易に乗り出した伝説の女商人・大浦慶の生涯を描いている。

 選考委員を交えたシンポジウムで朝井さんは「言葉のフォークロア(民間伝承)に興味がある。方言は日本文化の多様性を保つための財産」と切り出し、長崎弁にこだわって書いた理由を明かした。今後の目標として「古代の言葉を使って、あえて古いリズムを小説に盛り込みたい。消えてゆく言葉を現代の作家が意図的に使うことで、その言葉を持っていた命を今に伝承できたら」と語った。

 選考委員の万葉学者中西進さんは「近代とは何か、を描いた小説。茶からコーヒーへという生活様式の変化、また風という単語を象徴的に使って時代の変化を表している」と評し、同じく茶商人を描いた平岩弓枝さんの小説「おんなみち」の文化史的な側面と対比させながら「全く新しい茶の小説が誕生した」と称賛した。

 スラブ文学者の沼野充義さんは「男たちの歴史として語られがちな幕末、維新の背後に、これだけの女性がいたことに焦点を当てている」と特質を指摘した上で、「西洋文化を受容し、日本古来の文化と融合させながら新しい伝統が創られていく。その過程を描いた小説は、内に閉じこもりがちな今の日本に爽やかな風をもたらしてくれる」と話した。作家の加賀乙彦さんは、長編小説が少ない日本の文学界の現状に触れながら、受賞作の物理的な長さと、描かれたスケールの大きさをたたえた。