英国の欧州連合(EU)からの離脱を巡り、新たな離脱条件案で英国政府とEUが合意した。

 10月末の離脱期日まで約2週間に迫った土壇場で、懸案の英領北アイルランドに関する条件修正で双方が歩み寄った。

 EU首脳会議は新合意案を全会一致で承認し、来週のEU欧州議会でも可決される見通しだ。

 八方ふさがりだったジョンソン英首相にとって、目指す離脱実現へのハードルを一つ越えはしたが、少数与党の政権には英国議会の承認という高い壁が控える。

 急転直下の妥協によって、大きな混乱が懸念される「合意なき離脱」を避けられるのか、国内に新たな分断を抱えて政治の混迷が続くのか、正念場といえよう。

 離脱条件の最大の焦点は、EU加盟国アイルランドと国境を接する北アイルランドの扱いだった。

 新たな合意案では、英国はEUの関税同盟から離脱するが、北アイルランドのみ農産物や工業品の基準などで引き続きEUルールを適用するとした。地続きのアイルランドとの間で厳しい国境管理に戻るのを避けるためだろう。

 メイ前英首相がまとめた合意案は、国境管理の具体策が決まるまで英国全体でEUの関税同盟に残留するとしていた。これでは不完全だと離脱強硬派らが反発し、英下院で3度否決された。

 ジョンソン氏は「主権を取り戻すための素晴らしい合意ができた」と自賛する。だが、強硬に訴えてきた「完全な離脱」からの転換に理解は得られるだろうか。

 現時点で新合意案が議会承認を得られる見通しは立っていない。

 新合意案は、EUルールが残る北アイルランドと、英本土の間で税関検査が必要で、国内の一体性を損なう懸念がある。

 少数与党の政権に閣外協力する北アイルランド地域政党のほか、最大野党の労働党も新合意案に否定的だ。足元の保守党内でも弱腰だと離反が出るなど政権の求心力低下を招く可能性もある。

 英下院は19日にも新合意案の賛否を諮る。否決の場合、9月成立の離脱延期法で政府はEUへの離脱延期の要請を義務付けられている。

 だが、ジョンソン氏は延期をなお否定し、離脱強行をちらつかせて多数派獲得を図る構えだ。

 国民の生活や社会、経済を左右する重大な決断に拙速は避けねばならない。改めて民意を問うという選択肢を含め、長期に及ぶ国内対立を乗り越えるべく国民の合意形成への努力が必要ではないか。