政治家とカネを巡る新たな疑惑がまたも浮上している。

 ともに農相経験者で自民党の吉川貴盛衆院議員と西川公也前内閣官房参与に対し、鶏卵生産大手のアキタフーズの元代表が現金を提供した疑いが持たれている。

 業界に便宜を図ってもらう目的だったとみられている。

 農相や内閣官房参与は政策決定に強い影響力があり、贈収賄事件に発展する可能性もある。東京地検は徹底した捜査をしてほしい。

 吉川氏は現金授受を否定し、西川氏も「悪いことはしていない」としている。だが、公職にありながら利害関係者から金銭を受け取ったとの疑惑を放置すれば、政策の正当性や政治への信頼を損ねることになりかねない。国会の場などでしっかり説明すべきだ。

 現金授受の背景にあったとされるのは、家畜を快適な状況で飼育する「アニマルウェルフェア」の国際基準の緩和や、鶏卵価格が下がった際に生産者の損失を補填(ほてん)する安定対策事業の拡充問題だ。

 いずれも農家の経営に深く関わり、元代表は政治家などに積極的に働きかけていたとみられる。安定対策事業は、本年度から生産者に有利となるよう見直された。

 見過ごせないのは、両氏とも政府の要職に就いていた時期に元代表と密接な関係にあったことだ。

 吉川氏が受け取ったとされるのは計500万円で、農相在任中、3回にわたって大臣室で渡された可能性があるという。

 数百万円を受け取ったとみられる西川氏は2017年衆院選で落選後に内閣官房参与となり、その後、アキタ社顧問に就いた。

 そればかりか、日本養鶏協会の顧問でもあった18年11月、元代表とともに農水省に出向き、「適切な対応」を求める要望書を提出する場に立ち会った。

 政府の一員でありながら、業界の立場でも政府に働きかけをしていたことになる。自覚に欠ける行為と言われても仕方ない。

 吉川氏は疑惑発覚後、体調不良を理由に入院し、党のすべての役職を辞めると発表した。西川氏も「党と政府に迷惑をかける」との理由で内閣官房参与を辞任した。

 両氏を任命したのは安倍晋三前政権だが、路線を継承する菅義偉首相も疑惑が生じた責任を受けとめ、事実解明に努めるべきだ。

 政治家とカネを巡っては、安倍氏の「桜を見る会」夕食会費用の問題もくすぶる。政府と政権党の「1強」状態が公人としての倫理観をまひさせているかのようだ。