政権による強引な任命拒否問題を組織の見直しにすり替えた、との批判は免れないのではないか。

 自民党のプロジェクトチーム(PT)が、日本学術会議を政府から独立した新組織に移行させるのが望ましいとする提言書を政府に提出した。井上信治科学技術担当相は、学術会議側の意見も踏まえ、年内に政府としての方向性を示す考えを明らかにした。

 議論の端緒となったのは、菅義偉首相が学術会議から推薦のあった会員候補6人の任命を拒否したことだ。推薦に基づいて首相が任命すると定めた日本学術会議法に反するとの追及を受けると、自民党は組織見直しの必要性を主張し始めた。

 PTは発足からわずか2カ月で議論を取りまとめた。

 この間、首相は任命拒否の理由について「総合的、俯瞰(ふかん)的観点から判断した」「人事に関することなので答えを控える」などと繰り返し、明確にしていない。歴代の政府見解に反して一方的に拒否した理由の説明こそ先に行わなければ、政権への不信感は払拭(ふっしょく)できない。

 提言は、学術会議の在り方について、政治からの独立性を尊重するとしながら、「政治や政府を通じた『政策のための科学』の機能を十分に果たしているとは言いがたい」とも指摘している。

 組織の独立性を求める学術会議側の声を逆手に取った欺瞞(ぎまん)に満ちた内容だと言わざるを得ない。

 軍事研究に反対する声明を出してきた学術会議に対しては、かねて自民党内で不満が高まっていた。任命を拒否された6人は、安全保障関連法などを批判してきた研究者だ。政権の意に沿わない研究は認めない、と主張しているように受け取れる。

 独立後の運営に関しては、運営費交付金などで当面の間は予算措置を続けるとしているが、政府や民間からの調査研究の受託で競争的資金の獲得を促している。財政を外部に頼るやり方で、組織の独立性、中立性を十分に担保できるのか疑問だ。

 日本学術会議は科学者の戦争協力への反省を踏まえて戦後に発足しており、17~19世紀に設立された欧米のアカデミーとは成り立ちの経緯が異なる。

 内閣府の有識者委員会は2015年、学術会議の活動や組織改革を一定評価する報告書をまとめている。学術会議には政策をチェックする役割もあるはずだ。政府や自民党は、そうした機能を骨抜きにすることは許されない。