「国民のために働く内閣」を掲げたはずだ。その目標を実現できているとは言えまい。

 菅義偉政権が発足して、まもなく3カ月となる。

 新型コロナウイルス対策を最重要課題としてスタートした。流行「第3波」が勢いを増し、北海道や大阪府などで医療が逼迫(ひっぱく)している。対応が後手に回っているのは明らかだ。

 観光支援の「GoTo」事業が感染を広げているとの指摘がある。政府の対策分科会の専門家も人の移動制限を訴えた。

 しかし、菅氏は事業の抜本的な見直しに否定的で、中途半端な一部修正にとどめたままだ。

 感染防止と経済を両立させるという自らの方針にかたくなにこだわっているように見える。

 今は、感染防止を優先すべきだ。世論調査でも、GoTo事業を一時停止すべきとの声が多い。菅氏は、国民の不安や何を望んでいるかを理解する感度が鈍すぎるのではないか。

 かたくななのは、これに限らない。自ら進んで状況を説明しようとしない態度も気になる。

 記者会見は10月の外遊時を除いてわずか2回にとどまる。初の本格論戦が期待された臨時国会も1カ月余りで閉会した。会見、答弁とも、原稿の棒読みや原則の繰り返しが目立った。

 世論との対話を避けているかのようだ。コロナ対処の政府方針すら直接語りかけない国政トップでは、感染拡大への国民の懸念は解消されまい。

 日本学術会議問題を巡る国会審議では答弁のたびに矛盾が露呈し、会員任命拒否の理由を最後まで説明しなかった。

 恣意(しい)的とも言える法解釈を強弁し、国会での圧倒的な勢力を背景に異論や指摘に聞く耳を持たない姿勢は、強権的な体質を改めて浮き彫りにした。謙虚な政権運営を求めたい。

 一方、菅氏がどのような社会を目指しているのかは、いまだに見えない。

 携帯電話料金引き下げやデジタル庁設置、不妊治療の保険適用などを次々に打ち出した。

 ただ、耳目を引き、成果を出すことを優先している、との印象も拭えない。

 喫緊の課題である社会保障の将来像も描けていない。75歳以上の医療費窓口負担増や児童手当支給見直しの方向が固まったが、抜本的改革とは言い難い。

 団塊世代が75歳に差し掛かる時期を控え、社会保障費の急増は明らかだ。そのタイミングで政権を担うのに、乗り切るビジョンを示せないなら、国民の将来に対する責任は果たせない。

 2050年までに国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにする方針を打ち出したことは評価できる。どう実現するかの具体策づくりが問われることになる。

 政権の政策は今のところ、菅氏が関心を持つ範囲内でしか動いていないように思える。

 共同通信世論調査(今月5~6日)の内閣支持率は50・3%で、前月に比べ12・7ポイントも低下した。コロナ対策への不信が大きいとみられるが、国民に寄り添っていない姿勢を見透かされているのではないか。

 自らの言葉で説明を尽くし、多くの声に耳を傾けるべきだ。