京都市立芸術大学に3年前に着任した当時、指揮専攻は2回生の学生ただ1人だった。教師1人、学生1人という陣容で彼は息が詰まった事であろう。申し訳ないが、こちらもそうであった。指揮専攻生という事だけで、指揮者然として振る舞っている姿を微笑(ほほえ)ましく思う余裕はこちらには無い。指揮者とはそんなにカッコ良くもないし、偉くもない。だからこそ、彼の言動を苦々しく見ていた。そんな彼が少しずつ変わったような気がしたのは、後輩や大学院生が加わって一気に指揮専攻のクラスが大所帯となってからだ。比較の対象が出現した事で客観的に自分を見ざるを得ない状況になったからだろう。