あまりに遅い決断と言わざるを得ない。

 菅義偉首相は、観光支援事業「Go To トラベル」を今月28日から来年1月11日まで全国で一時停止すると表明した。

 国内での新型コロナウイルスの新規感染者は12日に過去最多の3千人超を記録。重症者も最多を更新し、医療の逼迫(ひっぱく)への懸念を募らせる専門家らから停止などの強い措置が求められていた。

 菅氏は経済失速への懸念を理由に事業継続に固執してきたが、小手先の見直しでは状況悪化に歯止めがかからず、方針転換に追い込まれたといえよう。

 これで流行拡大が止まり、医療体制が厳しくなる年末年始を乗り切ることができるのか。国民の命を守る政治の責任は重い。

 政府は先月25日、流行「第3波」拡大の抑え込みへ「今後3週間が勝負」と呼び掛けた。各地で飲食店の営業時間の短縮や地域間の往来自粛など対策の強化が行われた。

 だが、その3週間が終わろうというのに、増加傾向は続いたままだ。

 要因として、トラベル事業が札幌、大阪2市への割引停止など一部を見直しただけで継続され、対策の「緩み」を招いているとの見方が根強い。専門家らによる政府の対策分科会は、感染拡大が続く地域での一時停止を提言した。

 これを受け、政府は東京都と名古屋市を目的地とした利用を停止するのに加え、年末年始の全国一律停止に踏み込んだ。

 ただ、年末まで東京、大阪などの出発分は利用自粛の要請にとどまる。感染拡大を止める実効性は限られるのではないか。

 これまで政府は、トラベル事業が感染を広げたとの見方を否定し続けてきた。感染が全国へ飛び火している実態と専門家らの指摘に謙虚に向き合うべきだった。

 さらに気になるのは、対策の「スピード感」を欠いていることだ。

 11日に対策分科会の提言を受け、今回の事業見直しの決定までの「調整」に3日間も要した。国と自治体が判断の責任を押し付けあう構図が繰り返される中、週末の12日は全国の多くの地点で人出が増えた。対策が後手に回り、事態をより困難にしている。

 年末年始にかけ、全国的に医療提供の確保が難しくなる。あらゆる治療に制限がかかり、救える命が救えなくなる事態を避けるため、より強力な感染防止策と医療体制の備えが急がれる。