雪の中、天橋立周辺を訪れた観光客ら。「Go Toトラベル」の停止で、客足が鈍る懸念が地元で広がる(15日、宮津市文珠)

雪の中、天橋立周辺を訪れた観光客ら。「Go Toトラベル」の停止で、客足が鈍る懸念が地元で広がる(15日、宮津市文珠)

 国の観光支援策「Go To トラベル」の年末年始(28日~来年1月11日)の一斉停止を政府が決めたことで、京都や滋賀の宿泊施設では15日、予約のキャンセルが相次いだ。新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた観光・宿泊業界は息を吹き返しつつあったが、再び事業に急ブレーキが掛かる。書き入れ時を目前にした突然の「政治判断」に、多くの事業者が翻弄(ほんろう)されている。

 GoToの停止措置は、カニシーズン真っただ中の丹後地方を直撃した。名勝・琴引浜に近い京都府京丹後市網野町の宿「和のオーベルジュ まつつる」には14日夜からキャンセルが殺到し、10件の宿泊予約が消失。カニ解禁の11月以降、予約は例年の2倍のペースで推移し、停止となる期間も満室だった。オーナーの松梨善行さん(45)は「医療現場の逼迫(ひっぱく)を考えると仕方がないが、感染対策をしていただけに報われない思いもある。人数や地域を限定するなど、もう少しやり方もあったのでは」と話した。

 京都府宮津市の天橋立近くで飲食・土産物店を営む井上悦幸さん(57)は「地域限定で止めると思っていた。まさか全国一斉とは…」と落胆。旅先で使える地域共通クーポンの利用率は8割に達するといい、「高価格帯のブリしゃぶなどの注文は昨年に比べ約30%伸びた。年末年始に期待していたのでショックは大きいが、感染拡大を抑えるため、我慢するしかない」と話す。

 京都市内のホテルでも、キャンセルラッシュの様相となった。「朝から電話が鳴りやまない。予約の取り消しも多い」。リーガロイヤルホテル京都(下京区)は影響の大きさに驚く。政府が全国一斉停止を発表した14日夜から約1日で、期間中の予約件数の約1割が吹き飛んだ。16日以降は電話応対するスタッフの増員も検討している。

 滋賀県旅館ホテル生活衛生同業組合の前川為夫理事長も、高島市の琵琶湖畔で営む旅館で直近2日間で十数件のキャンセルがあったが、「医療現場の状況を考えると、決定を受け止めるしかない」と理解を示す。

 京都市内の人気観光地嵐山でも、事業者の胸中は複雑だ。嵐山商店街の細川政裕会長(59)によると、10月以降の週末は着実に人出が回復。地域共通クーポンの利用も多く、GoTo効果を感じたが、今回の措置は「受け入れざるを得ない」としつつ、観光が感染を広げる「悪者」の印象が広まる事態を憂慮。「観光地への旅行自体は悪いことではないと思えるように安心・安全な環境をつくる」と自らに言い聞かす。

 旅行会社も顧客対応に追われている。ツアーポート(京都府向日市)の北澤孝之社長は政府の度重なる方針転換に「現場には手間が積み重なるだけ。恩恵も大手の予約サイトに集中しており、支援につながっている実感はない」と肩を落とす。