神奈川県座間市のアパートで2017年に男女9人が殺害された事件で、東京地裁立川支部が白石隆浩被告に死刑を言い渡した。

 被害者となった10~20代の若者たちは全員が会員制交流サイト(SNS)で白石被告と接点があった。

 判決は「精神的に弱っている被害者を誘い出す手口は巧妙で卑劣。金銭や性欲など自己都合のみを目的とした身勝手な犯行で酌量の余地は全くない」と厳しく断じた。

 公判では、勉強や人間関係などで悩みを抱える被害者がSNSのツイッターで弱音をつぶやいたところに、自殺願望者を装った白石被告がつけこんだ構図が浮き彫りになった。

 日常生活のコミュニケーションの手段となったSNSは身近さゆえの危険性もはらむ。犯罪史上まれに見るこのような凶悪な事件を繰り返さないための対策を急がねばならない。

 事件後、ツイッターの運営会社は、「死にたい」などの言葉を検索すると相談機関の連絡先を表示したり、自殺を助長する書き込みを禁じたりする対策を講じた。京都府や滋賀県は、若年層の利用を念頭に、従来の電話に加えてSNSによる相談窓口も設けた。

 だが、インターネット上では自殺願望の書き込みが後を絶たない。現実社会に居場所がなく、息苦しさを感じる若者にとっては、匿名で気軽に利用できるSNSが「避難先」になっているという。

 そういった場所には、白石被告のように悪意を持った人物も集まってくる。

 事件に巻き込まれる前に悩みを抱える人を見つけ、相談につなげる支援が民間団体を中心に進められている。国や自治体は、このような取り組みをさらに後押ししてほしい。

 今回の事件で被害者の3人が当時高校生だったように、SNSの利用は低年齢化が進んでいる。

 SNSを通じて犯罪被害に遭う子どもも増加傾向にあり、19年は過去最多の2095人だった。言葉巧みに誘い出され、性暴力などを受けるケースが多い。教育現場では、顔の見えない相手と簡単に会わないなどの指導が求められる。

 コロナ禍で人同士のつながりが希薄化し、失業が増えるなど社会の生きづらさは増している。今年は7月以降、自殺者が5カ月連続で前年同月を上回った。つらい思いを抱える人たちに寄り添い、救いの手を差し伸べる仕組みを官民挙げて拡充しなければならない。