刑事責任を問えると判断した、ということだ。

 昨年7月、京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)で放火によって36人が死亡した事件で、京都地検が住所不定、無職の青葉真司容疑者を起訴した。

 罪名は、殺人、現住建造物等放火など五つ。

 重軽傷を負った方も32人いる。内外に大きな衝撃をもたらした事件の発生から約1年5カ月が経過して、裁判員裁判が行われる。

 犠牲者の家族や関係者らには、ようやくここまで来た、との思いがあるだろう。

 事件の発生直後に身柄を拘束された青葉被告が犯人であることには、疑いの余地がないとされる。それなのに起訴まで時間がかかったのは、責任能力がなく罪に問えない「心神喪失」と診断されるケースがあり得るからだ。

 被告は、過去に精神疾患と診断されている。

 一方で、逮捕後に「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思った」と述べたり、計画的に凶器の調達をしたりしていた。

 地検は、半年に及んだ精神鑑定で、善悪の判断や行動の制御ができて、責任を問える基準を満たしているとみて、起訴に踏み切ったようだ。

 裁判では、弁護側が改めて精神鑑定するよう求める場面も想定される。事件でやけどを負った被告は出廷に耐えられないとして、公訴棄却を請求する可能性もありそうだ。

 とはいえ、平成以降では最多の犠牲者を出した大事件である。必要な手続きを踏んだうえで、全貌が明らかになるようにしてもらいたい。

 捜査関係者によると、調べに対し、被告は一貫して「小説を盗まれたから火を付けた」と主張しているという。

 これだけでは、なぜ、あのような凶悪な事件を起こしたのか、理解するのは難しい。

 被告は、京都アニメーションの関連商品を持っていて、事件前には同社が制作した人気アニメ作品の「聖地」と呼ばれる場所を訪れていたことが分かっている。アニメファンとも推測できよう。

 それが、どのような経緯で、京都アニメーションに恨みを抱くようになり、放火を思い立ったのだろうか。

 動機の解明が、何より求められる。公判では、審理を尽くして被告の心理に迫り、悲劇が繰り返されないようにしたい。