米大統領選で勝者を正式に決める選挙人投票が行われ、民主党のバイデン氏の勝利が確定した。

 共和党現職のトランプ大統領が敗北を認めずに法廷闘争を構えるなど異例の展開をみせていた選挙は、ようやく区切りを迎えた。

 バイデン氏はトランプ政権下で進んだ社会の「分断」を修復するとしている。国民の融和を図るのは簡単ではないが、民主主義国のリーダーにふさわしい政策や政治姿勢を示してほしい。

 すでに着手している閣僚などの人事構想からは、多様性やバランスに配慮する狙いがうかがえる。

 国防長官に退役陸軍大将のオースティン氏、財務長官に前連邦準備制度理事会(FRB)議長のイエレン氏、運輸長官にインディアナ州サウスベンド前市長のブティジェッジ氏など黒人や女性、同性愛公表者といったさまざまな属性の人材を幅広く登用する方針だ。

 白人男性の起用例が多かったトランプ政権と比べ、目に見える違いを打ち出したといえる。

 人事の顔ぶれだけでは済むまい。訴えてきた政策の実現にどうつなげるか、具体策が問われる。

 バイデン氏はトランプ政権が掲げる「米国第一主義」を転換する方針だ。温暖化対策枠組みのパリ協定やイラン核合意への復帰などで、国際社会との間に生じた溝を埋めていくことになろう。

 国際協調を重視する路線への回帰は歓迎したい。

 ただ、足元の国内には不安な要素が多く、当面は内政問題に集中せざるを得ないとの見方もある。

 大きな懸念は、バイデン氏の主張に異を唱える勢力が根強いことだ。負けたとはいえ、トランプ氏には熱狂的な支持者が多い。民主党内の勢力も、中道穏健派と進歩派に二分されている。今後、新政権の足かせになりかねない。

 こうした状況の中、新型コロナウイルス対策などの課題に取り組むには難しい対応も迫られよう。

 対立や分断の背景には、従来の政治から見落とされ、貧困や格差を抱えるに至った人々の存在がある。社会的、経済的に傷ついた人たちを救済できる具体策を示すことが欠かせない。

 上院の多数派を決めるジョージア州の2議席の決選投票が年明けに控える。一つでも落とせば、民主は上院で少数派となる。バイデン氏の支持基盤は万全ではない。

 国内の状況に引っ張られ、貿易や外交などの政策に影響が出る可能性もある。日本は、そうした事情をよく見極めねばならない。