視覚障害者が駅のホームから転落する事故が後を絶たない。

 先月29日には東京メトロの東陽町駅で、白杖(はくじょう)を使っていた男性が転落、電車にひかれて死亡した。今年1月と7月にも、東京都内のJR日暮里駅とJR阿佐ケ谷駅で同様の事故が起きている。

 いずれの事故現場にも転落を防ぐホームドアがなく、設置の遅れが指摘されている。整備を急ぎつつ、痛ましい事故をなくすために何をすべきか。転落の詳細な原因を分析し、実効性のある対策を講じていかねばならない。

 東陽町駅の事故当日の防犯カメラには、男性がホームへ通じる階段を下り、そのまま足を止めることなくホームから転落する様子が映っていたという。反対側ホームに到着した電車を、乗ろうとした電車と勘違いしたとみられている。

 同駅のホームドアは設置工事の途中で、扉は開いたままだった。完成していれば事故を防げた可能性が高い。

 国土交通省は2011年に東京のJR目白駅で全盲男性が転落死した事故の後、利用者が1日10万人以上の駅を対象にホームドアの設置を求めた。16年に東京メトロの青山一丁目駅でも死亡事故が起きると、対象の駅は原則、20年度までに設置するよう期限も設けた。

 だが、今年3月末時点で利用者10万人超の285駅でホームドアが設置されているのは、54%にとどまっている。全国すべての9465駅に対する設置率は、1割にも満たない。

 多額の設置費用がかさむ上、駅の構造や車両によって扉の位置が異なるといった技術的な難しさがネックになっているという。

 国交省は、人工知能(AI)でカメラ画像を解析してホームの端を歩いている人に注意喚起したり、スマートフォンで視覚障害者の歩行を支援したりといった新たな技術を活用する検討を始めているが、導入に時間がかかることが想定される。

 転落を防ぐハード設備だけに頼らない対策が急がれよう。

 16年の事故を受けた国交省の検討会は、駅員らによる誘導案内の強化を指摘している。視覚障害者に気付いた際には声をかけ、断られた場合でも乗車するまで見守るよう求めている。

 事故があった東陽町駅は、警備員2人と駅員1人をホームに配置していた。だが、改札の駅員らは白杖の男性に気付かなかったという。

 都市部では改札がほぼ自動化され、地方でも人件費削減や業務効率化を名目に駅の無人化が進んでいる。支援が必要な人に目を配れる態勢が取れているだろうか。

 鉄道会社は駅や改札口単位できめ細かく自社の取り組みを検証してほしい。国も事故原因を詳しく調べ、具体的な対策の見直しにつなげなければならない。

 ホームの安全性を高めることは、子どもや高齢者らの事故防止にもつながる。利用者も、周囲に困っている人がいれば声をかけるなど、気配りを忘れずにいたい。