政府は中東への自衛隊派遣に向けて本格的に検討することを決めた。

 中東情勢の安定と日本関連船舶の安全確保が理由だ。

 米国が主導するイラン沖・ホルムズ海峡での有志連合構想には参加せず、日本独自に派遣する方針という。周辺のアラビア半島南部の海域で情報収集に当たる案を軸に、年内にも決定するとしている。

 不安定化する中東地域への実力部隊の派遣に踏み切れば、これまで外交を中心としてきた対処方針の大きな転換となる。その必要性について国内外の理解を得られるかが問われよう。

 今回の自衛隊派遣案は、同盟国・米国と友好国・イランの双方の顔を立てる折衷策なのは明らかだ。

 背中を押すのは、「タンカーは自国で守るべきだ」と艦船派遣を求めるトランプ米大統領の圧力だ。だが、米国が呼び掛ける有志連合への参加は法的なハードルが高い上、歴史的に関係の深いイランから敵対視される可能性が高い。

 とはいえ、日本は中東に原油輸入の8割以上を頼っている。何も関わらないわけにはいかない-という苦渋の策が独自派遣ではないか。

 同時にイランを刺激しないよう配慮がのぞく。派遣地域はホルムズ海峡を避けてオマーン湾、イエメン沖など距離を置き、調査名目としたのは、「有志連合とは一線を画す」と理解を求めるためといえよう。

 だが、そうした形の派遣が「中東情勢の安定」「日本船舶の安全確保」にどうつながるかは不透明だ。

 中東の近海では、今年6月にホルムズ海峡付近で日本の海運会社が運航するタンカーが何者かに攻撃されたが、それ以降は日本船舶が狙われるケースは起きていない。

 政府も、日本の船舶防護を「ただちに実施を要する状況にはない」(菅義偉官房長官)と認めており、あくまで目的は「情報収集体制の強化」と位置づける。

 安全保障関連法の「存立危機事態」「重要影響事態」と認定されれば防衛出動も可能になるが、現時点でそこまで緊迫した状況でないのは明らかだからだ。

 代わりに浮上したのが、防衛省設置法に基づく「調査・研究」だ。緊急時の迅速な対応に使われ、船舶の防護はできないが、国会の承認を必要としない。政府の独自判断で自衛隊の海外活動が広がる恐れがある。

 政府は、派遣先での調査・研究活動で米国と連携する考えも強調している。事態が急変すれば、自衛隊法に基づき船舶を守る「海上警備行動」を発令することも可能という。現地で不測の事態に巻き込まれるリスクも考えられる。

 なぜ派遣が必要か、目的にかなう活動なのか、なし崩しに拡大しないか、政府は説明を十分に尽くし、いかに歯止めを設けるかの議論も欠かせない。

 米国、イラン双方に近い関係を生かし、対話による緊張緩和に力を入れてきた日本の役割を色あせさせるようなことは避けるべきだろう。