米原市役所

米原市役所

 生活保護の対応をしていた男性を殺害しようとしたとして、殺人未遂などの罪に問われた滋賀県米原市社会福祉課の元主事(28)=懲戒免職=の裁判員裁判の判決公判が22日、大津地裁で開かれ、大西直樹裁判長は懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)を言い渡した。

 生活保護業務に奔走していた若手職員がなぜ凶行に及んだのか。公判では、職場の人員不足と、受給者からの業務外の「理不尽な要求」の中で、正常な判断力を失った実態が浮かび上がった。

 「男性から解放されたかった」。法廷で元主事は殺害を決意した動機を打ち明けた。被害者の男性の対応に苦しみながら仕事を続けた理由を問われ、「逃げたらケースワーカーがいなくなる。どんな手を使っても続けなければと思った」と声を絞り出した。

 判決によると、元主事は2017年7月にケースワーカーとなり、当初は市内の生活保護世帯約60軒を担当。社会福祉法はワーカー1人当たりの担当目安を80世帯とするが、市では19年10月に同僚が休職するなどし、犯行までの約3カ月間、元主事1人が約140軒を担った。市社会福祉課は「サポート体制は整えていた」などと釈明するが、判決は「配慮は十分にされず、負担が飛躍的に増して追い詰められていった」と指摘した。

 公判では意思疎通が不十分な職場環境も表面化した。市は男性を対処が難しい「困難案件」とみて、元主事には訪問の際は上司に報告するよう指導。ただ、元主事は男性と円滑な関係を築くため、勤務時間外に私的な要求に応じており、「(業務外の行為は)公務員としてあるまじきことだと思い、言えなかった」という。業務負担の重さを上司らに訴えても改善されなかったとし「市への不信感が募った」と明かした。

 「ケースワーカーが1人で問題を抱え込み追い詰められることはよくある」。花園大の吉永純教授(公的扶助論)は指摘する。京都府向日市では19年6月、ケースワーカーの元職員が担当していた男性の傷害致死事件に加担したとし、今年3月に死体遺棄罪で執行猶予付きの有罪判決を受けた。検証した市の第三者委員会は、脅迫的な言動などで男性と元職員に主従関係が形成されたが、上司が気付かなかった点などを指摘し「市の責任は重い」と結論づけた。

 吉永教授は「受給者の要望に真剣に向き合いつつ、問題あるケースには記録を共有して職場が一丸となり、不当要求には毅然(きぜん)と対応するべきだ。なぜ、今回それができなかったのか。個人の責任にせず米原市としても検証すべきだ」と強調する。