「政治とカネ」を巡り一国の首相経験者が、捜査当局の事情聴取を受けるのは異例だ。重く受け止めなければならない。

 安倍晋三前首相が主催する「桜を見る会」の前日、安倍氏の後援会が催した夕食会の費用を補塡(ほてん)していた問題で、東京地検特捜部が安倍氏を任意で事情聴取したことが分かった。

 特捜部は政治資金規正法違反(不記載)の罪で、後援会代表の公設第1秘書を略式起訴する方針を固めている。聴取は安倍氏が費用負担を認識していたかを確認するためとみられ、安倍氏は関与を否定したもようだ。

 不起訴となる公算大との観測が流れているが、安倍氏のこれまでの説明には疑問点が少なくない。特捜部には真相究明に徹して捜査を詰めてもらいたい。

 問題の夕食会は2013~19年に毎年1回、東京都内のホテルで開かれ、5年間で計約2300万円を支払った。参加者の会費合計とは900万円余りの差額があり、安倍氏の資金管理団体が穴埋めしたとされるが、政治資金収支報告書には記載していなかった。

 安倍氏は「事務所からの補塡はなかった」と国会などで繰り返してきたが、先月になって補塡を認めた。安倍氏の周辺が特捜の聴取を受けていたことが報じられた際に、秘書に確認し初めて知ったという。

 すんなり納得できない。昨年11月の問題発覚以降、国会で安倍氏答弁とホテル側から明らかになった価格や支払い方法、明細書の扱いなどで違いがあるのを指摘されていたのに、事実関係を事務所に問いたださなかったのか。

 国会で追及されている問題だ。秘書を信頼していたというだけでは合点がいかない。秘書の説明をうのみにしていたのなら、管理能力に疑問符がつくというものだ。

 衆院調査局によると、今年3月までに事実と異なるとみられる答弁は少なくとも118回に上る。

 虚偽答弁にあたるかどうかは、安倍氏が補塡の事実をいつ知ったかに関わる。捜査のポイントであり、現時点では疑いの目で見られても仕方あるまい。

 安倍氏は捜査終結後に説明するとしているが、国権の最高機関である国会での発言は、捜査中であっても国会の場で説明するのが筋だろう。虚偽答弁の疑いがある以上は証人喚問も受けて立つべきだ。国民の前で説明するのが、首相経験者としての責任ではないか。