戦闘的歴史家・坂野潤治さんが亡くなってはや2カ月がたつ。惜しい人を亡くしたという月並みな言い方はあたらない。近代史という刀をびゅんびゅん振りかざし、史実という対象を切りきざみ、それでも我勝てりとはならぬ現状に悩み、また気をとり直して刀を構える。古希を迎えた晩年の坂野さんは、若い頃の『明治憲法体制の確立』で見せた、史料を読みこみ、それでいて史料に溺れることなく時代の国家像を鮮明に描き出す技から、より近代史に対して戦闘的にむきあい、あるべき国家像を提示する構えに変わっていった。その意味では、あの60年安保闘争を戦闘的に闘った運動の精神を、自らの近代史学の中に徐々に蘇(よみがえ)らせていく学的生涯であった。