透明感のある、美しい映像がスクリーンに流れ始めた途端、涙がこぼれた。

9月に封切りされた京都アニメーション(本社・京都府宇治市木幡)の「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。公開を待ちわびていた20代の男性は、映画館内でこう思った。「やっぱり、アニメが好き」

同時に、後悔と戸惑いがない交ぜになった感情がこみ上げてきた。

「大好きなのに、どうして、あんな事をしてしまったのか」

この半年前、自宅に10人近い警察官がやってきた。アニメ制作関係者に対する「殺害予告」を掲示板サイトに投稿したとして、脅迫容疑で逮捕された。

男性が京都新聞社の取材に応じたのは、京アニ事件の容疑者が起訴された今月16日。まだ表情にあどけなさが残る、礼儀正しい好青年だった。

「アニメで楽しさ知った」

男性は小学1年からずっと不登校で、小6の時に深夜アニメの面白さに魅了された。中でも「中二病でも恋がしたい!」や「けいおん!」など京アニ作品のファンになった。

アニメに対する愛着を語る男性。中でも京アニの「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が一番好きな作品という

「作品を通じて、学校生活の楽しさを知ることができた。自分はアニメに育ててもらった」。そう思うからこそ、大好きな声優が頻繁に中傷されるネット空間に憤りが募った。

矛先をそらそうと、声優を擁護する書き込みをしたが、思い通りにいかず不満はたまる一方だった。

そんな時、京アニが放火された。大切に育ててきた愛犬が死んだ。SNSを通じてできた唯一の友人とも疎遠になった。つらい出来事が重なり、自暴自棄になった。

「あえて自分が過激な書き込みをすれば、中傷被害に遭う声優に同情が集まるかもしれない。自分は逮捕されてもいいから、ネットの闇を多くの人に知ってもらいたい」

アニメに注いできた熱量は正義感をねじ曲げ、応援している声優たちへの「殺害予告」に発展した。

インターネット掲示板に投稿されたアニメ制作関係者に対する脅迫文言のコラージュ

世界的人気を誇る京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)が白昼に放火された事件は、アニメ業界に危機管理の再考を促した。ファンに夢を届けようと奮闘するクリエーターに対し、敵意が向けられる理由はどこにあるのだろう。