政府が、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備の基本方針を決定した。

 誘致を目指す自治体からの申請を来年10月~2022年4月に受け付け、有識者委員会の審査を経て最大3カ所を選ぶ。開業時期は20年代の後半にずれ込む見通しという。

 政府はIR整備で訪日客の増加による観光振興などを期待する。だが、新型コロナウイルスの流行に歯止めがかからず、人の流れが感染拡大前の水準に回復するかは見通せない。日本でのカジノ開業を目指していた海外事業者が撤退を表明する動きも出ている。

 IR整備の前提条件は崩れている。ここで立ち止まり、事業自体の是非を考え直す必要があるのではないか。

 IRにはこれまでに、横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県が誘致を表明し、東京都や名古屋市なども申請を検討している。公募で選んだ事業者と共同で国に整備計画を出す必要があるが、IR運営の実績が国内にはなく、各自治体はノウハウを持つ海外事業者の参入に期待を寄せている。

 だが、新型コロナの流行で海外事業者は苦境にある。

 いち早く事業者を公募した大阪府・市には、米カジノ大手のMGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの共同事業体が唯一応じたが、米国内の施設休業を発表するなどコロナ感染の影響を受けるMGM側から事業提案書などの提出延期を求められた。出入国規制などでカジノの売り上げは世界的に落ち込んでおり、経営悪化で事業者が日本へ新規参入するハードルは高い。

 新型コロナの影響をどう計画に織り込むかも課題となる。感染が収束に向かうのか読めない中での準備は困難が予想される。集客や営業面で事業が成り立つのか、十分な検討がないまま誘致を進めるようなことがあってはならない。

 政府の基本方針は今年1月に決まる予定だったが、内閣府のIR担当副大臣を務めた衆院議員が逮捕された汚職事件で先送りされていた。事件の全容はいまだ解明されておらず、公正性や透明性の確保に向けた検証も必要ではないか。

 カジノを巡っては、ギャンブル依存症の増加や生活環境の悪化を心配する声が根強い。IR整備法は日本人客の入場を週3回、月10回に制限することなどを規定するが、効果を疑問視する声もある。国民の懸念が払拭(ふっしょく)できているとは到底言えまい。