尻に火が付き、燃え広がってから、やっと腰を上げたということか。

 政府が、新型コロナウイルス特別措置法の改正に向けた議論をにわかに始めた。

 感染拡大を防ぐため、都道府県知事による店舗の休業要請に強制力を持たせることなどを検討するという。菅義偉首相は、来年1月召集の通常国会への改正案提出に意欲を示した。

 今ごろになって、遅きに失した感が強い。特措法に基づく緊急事態宣言を出した春の感染「第1波」時から対策の実効性が疑問視され、全国知事会などから権限強化を求められてきたのに、政府は先送りを続けてきた。

 それが、年末年始を前に第3波の感染拡大が止まらず、医療の逼迫(ひっぱく)感が強まる中で方針転換を迫られた形だ。後手に回る政府の対応への批判をかわし、「手詰まり」打開への姿勢を示そうとの狙いが透ける。

 臨時国会を閉じてからの法改正議論は目下の第3波対策に間に合わず、付け焼き刃となる懸念も拭えない。政府は早急に論点を深め、可能な限りの対策強化策を明示していくべきだ。

 特措法改正の焦点は、店舗への休業や営業時間の短縮の要請にいかに実効性を伴わせるかだ。

 夏場の感染第2波は国民の自発的な協力で乗り切ったが、現在の第3波は、政府が「勝負の3週間」と呼び掛けても都市部などの人の動きが減らない現実がある。

 主な感染源を飲食店とみて、東京や大阪、京都などでも営業時間の短縮を要請しているが、影響の長期化もあって応じない事業者も目立っている。

 政府の対策分科会は、感染拡大が深刻な東京都で一層の時短対策を求めるが、都側は協力店が減りかねないと二の足を踏む。現行法の「お願い」ベースでは徹底できず、感染防止策の効果が限られる状況は改めねばなるまい。

 法改正の議論では、要請に従わない業者への罰則や、行政上の「過料」の導入などが検討課題になるとみられている。

 ただし、店舗営業など私的権利の制限は必要最小限に抑えるべきである。強制力を伴う措置に見合う業者への補償を明確に位置づけ、国が財政支援を講じることが前提だろう。

 感染防止の実効性を担保する上で、対策の科学的根拠と適用範囲の基準を明確化し、透明性と納得感を高めることも不可欠だ。