この弁明では納得できない。

 「桜を見る会」前日の夕食会の費用補塡(ほてん)問題で、安倍晋三前首相が衆参両院の議院運営委員会での説明に臨んだ。国会で100回以上も事実と異なる答弁を繰り返してきたことについて、「私が知らない中で行われた」「秘書に任せていた」などの発言を繰り返した。

 「政治とカネ」を巡って一国の首相経験者が違法行為への関与を疑われている。だが説明は真相解明にほど遠く、疑惑はかえって深まった。国会の場で改めて話すべきだ。

 安倍氏は、国民への謝罪や道義的責任は口にしたが、費用補塡や虚偽の答弁に至る経緯を自ら明らかにしようという姿勢は終始見られなかった。

 費用の設定や支払い方法への不審点を再三にわたって指摘されていたにもかかわらず、秘書の言い分だけをうのみにしたとは信じがたい。ホテル側への問い合わせという簡単な作業さえ怠っていたのも常識では考えにくい。

 国民や国会を欺き、政治不信を拡大させた責任は大きい。

 東京地検特捜部は、政治資金規正法違反(不記載)容疑で告発された安倍氏を嫌疑不十分で不起訴とした。補塡に関して具体的な指示などの共謀を示す証拠が見つけられず、罪に問えなかったという。夕食会を主催した後援会の代表を務めた公設第1秘書だけを略式起訴した。

 強制力を伴った事務所の捜索などを行わず、金庫番の秘書の刑事責任を問うだけで捜査を終結したのは釈然としない。告発した弁護士グループが検察審査会への申し立てを検討するとしたのは当然だろう。

 今回の問題を巡っては、選挙区の有権者への寄付を禁じる公選法違反容疑での告発もあったが、起訴は見送られた。会費以上の利益を受けたという参加者の認識の裏付けが難しかったためだという。

 ただ、地元支援者らに高級ホテルでの宴席を安価に提供しており、利益供与に当たる可能性も指摘されている。

 昨日の説明で安倍氏は、野党からの議員辞職要求を拒否し、「信頼回復にあらゆる努力を重ねる」と答えたが、それには過ちの説明責任を全うすることが必要だ。

 過去の答弁を訂正したいとの理由で議運委に臨んだのなら、うそをつけば偽証罪に問われる証人喚問を受け入れ、誠実に答えるのが首相経験者としての責務ではないか。安易な幕引きは許されない。