澄む空気。光の旅

「帆船 朝」 1926(大正15)年

 朝日を浴びてバラ色に輝く山肌、夕暮れの空を映して揺れる水。国内外の風景を、空気の澄み方まで正確に表現した吉田博(1876~1950年)の木版画約200点を紹介する。

 行動の人だ。京都と東京で洋画を修業後、23歳でほとんどつてのない米国に渡り、水彩画の技術を認められて各地で展覧会を開く。自作を売って資金を得るとヨーロッパに渡り、西洋美術を勉強して腕を磨いた。明治~昭和にかけて風景画の第一人者、近代西洋画壇の支え手として活躍した。

「タジマハルの庭」 1931(昭和6)年

 49歳で日本伝統の木版画の復興に取り組む。水彩画で鍛えた色彩感覚を生かしつつ、洋画の陰影を取り込んだ画面は国内外で評判を呼んだ。特に、少年時代から愛した山岳風景、「世界で最も澄んでいる」と評した日本の水の表現は抜きんでて美しい。

「神樂坂通 雨後の夜」 1929(昭和4)年
「金閣」 1933(昭和8)年

 瀬戸内海に浮かぶ舟を描いた「帆船 朝」、ぬれた路上に明かりが映る「神樂坂(かぐらざか)通 雨後の夜」など、朝もやや雨のにおいが画面から立ち上るようだ。「金閣」の水面に映る姿は周囲の木々に溶け込んで見える。「スフィンクス」「グランドキャニオン」はその国の乾いた空気を伝える。

「スフィンクス」 1925(大正14)年
「グランドキャニオン」 1925(大正14)年

 毎年、夏は山に長期滞在して制作するほど自然を愛し、親しんだ。吉田博の作品は洋の東西を問わず、美しい風景へのあこがれと自然への賛美にあふれている。



【会期】2021年1月5日(火)~18日(月)
【会場】京都高島屋7階グランドホール(京都市下京区四条河原町)
【開場時間】午前10時~午後8時 最終日は午後5時閉場(入場は閉場30分前まで)
【入場料】一般1000円(800円)、大学・高校生800円(600円)、中学生以下無料。障害者手帳提示の人と同伴者1人は無料。かっこ内は前売りと団体10人以上の割引料金。午後6時以降は半額 ※入場は事前のWEB予約を優先。問い合わせは075(221)8811まで。
【主催】毎日新聞社、京都新聞