国は一刻も早く被害者を救済する仕組み作りに乗り出すべきだ。

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、中皮腫や肺がんになった労働者や遺族が起こした訴訟で、国の賠償責任が初めて確定した。

 原告327人に計22億8千万円を支払うよう国に命じた東京高裁判決について、最高裁は国の上告を受理しない決定をした。

 2008年から京都など全国9地裁で千人以上が起こした「建設アスベスト訴訟」では、高裁段階で国への請求を認める判決が続いていた。提訴から12年が経過しており、最終的な司法判断を待たずして亡くなった原告も多い。

 田村憲久厚生労働相は「責任を感じ、深くおわび申し上げたい」と謝罪したが、敗訴を重ねながら控訴、上告を繰り返して訴訟を長引かせた国の責任は極めて重い。

 安価で耐火性に優れた石綿は戦後、断熱材などとして建設の現場で広く使われてきた。一方、空気中に飛散した粉じんを吸い込むと中皮腫や肺がんなどを引き起こす可能性は、早くから指摘されていた。国が使用を全面禁止にしたのは06年で、安全対策の遅れが健康被害を広げたのは明らかだ。

 今回確定した判決は、国は遅くとも1975年には防じんマスク着用などを雇用主に義務づけ、現場に警告表示すべきだったと指摘。規制を怠った国の対応を違法と断じた。

 企業に雇われた労働者だけでなく、個人事業主である「一人親方」への賠償も命じた。これまでは労働安全衛生法上、保護の対象となっていなかった。一人親方も下請けとして他の作業員と同じように働いている現場の実情を踏まえ、救済の対象を広げた判断は歓迎されよう。

 原告側は、石綿を使用した建材メーカーにも損害賠償を求めていたが高裁段階では退けられていた。この点について、最高裁は来年に弁論を開くとした。

 同種の他の訴訟では、建材の種類や市場シェアに応じてメーカーの責任を認める判決が続いており、最高裁も同様に請求を認める可能性が出てきた。

 石綿による健康被害を受けた人や遺族には労災保険および06年制定の石綿救済法に基づく給付制度がある。原告側はこれらでは不十分で、被害者の全面救済のため、国とメーカーが資金を負担して補償基金を創設するよう訴えている。

 肺がんや中皮腫の発症は石綿を吸い込んでから数十年かかり、これからも多くの犠牲者が出る可能性がある。建設現場の被害者は特に多いとされ、原告はこのうちの一部に過ぎない。

 最高裁決定を踏まえ、現制度を見直し、補償の枠組みを広げる議論を早期に始めるべきだ。

 石綿は全国で約300万棟ものビルやマンションなどに使用されたと推定されている。これらの解体のピークは28年ごろと見込まれている。

 現場での作業従事者だけでなく周辺住民にも被害が及ばないよう、国や自治体は、飛散防止のための対策や規制を急ぐ必要がある。