練習に励む京都国際高の1、2年生の野球部員(2020年12月15日、京都市東山区)

練習に励む京都国際高の1、2年生の野球部員(2020年12月15日、京都市東山区)

「1、2年生には僕らの分も頑張ってほしい」とエールを送る前主将の3年森下結翔さん(2020年11月10日、京都市東山区)

「1、2年生には僕らの分も頑張ってほしい」とエールを送る前主将の3年森下結翔さん(2020年11月10日、京都市東山区)

小牧監督から指導を受ける京都国際高ナイン(2020年12月15日、京都市東山区)

小牧監督から指導を受ける京都国際高ナイン(2020年12月15日、京都市東山区)

 京都市東山区の京都国際高のグラウンドで、野球部員が白球を追っていた。例年に増して熱が入るのは、秋の近畿大会でベスト4に進み、春の選抜大会に出場することが決まった。初夏通じて初の甲子園となる。

 1、2年生とともに、夏で引退した3年生の姿もあった。機敏な動きでノックの打球をさばき、後輩たちに手本を示す。

 前主将の3年森下結翔さん(18)は後輩の活躍に「僕たちの借りを返してくれた。素直にうれしい」。でも、と複雑な表情で続けた。「嫉妬心というか…。自分たちもチャンスがほしかったと、正直思う」

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で休校中だった昨年5月20日、森下さんは京都府伊根町の実家にいた。テレビのニュース速報で流された字幕に驚いた。〈夏の甲子園中止〉

 京都国際高は、府内外から入学した選手たちが寮生活を送りながら長時間のトレーニングで鍛えられ、近年力を付けてきた。前年の2019年夏は京都大会決勝でサヨナラ負けだったが、甲子園まであと一歩に迫った。20年夏に向けて、強打の選手がそろい、悲願に向けて切磋琢磨(せっさたくま)していた。森下さんも「まだ甲子園に出ていないチームで挑戦することに価値がある」と同高に進学を決めた。甲子園の中止は覚悟はしていたが、頭では理解できない。「主将としてみんなを励まさないといけない」。父親の言葉にもそんな気になれなかった。

 6月から学校が再開し、府高野連は代替大会を開催する方針を示す。「甲子園につながらない大会なんて」「後輩に経験を積ませた方がいい」。3年生16人で集まったが、消極的な意見が相次いだ。一方でプロ入りや大学受験に向けて試合でアピールしたい声もあった。

 「気持ちがそろっていないのは相手にも失礼です」。大会には2年生らに出場を譲りたいと小牧憲継監督(37)に申し出た。「本当にそれでいいのか。お世話になった人たちの気持ちも考えるべきだ」。小牧監督のアドバイスもあり、16人は再び話し合った。「棄権するのは、負けることと同じかもしれない」「3年間練習してきたことを出し、活躍する姿を両親に見せよう」。みんなが本音をぶつけたことで最後には、気持ちの距離を縮めることができた。