衆院議員の任期が10月21日に満了する。在職日数の歴代最長を更新した安倍晋三前首相の後を受けた菅義偉首相が、初めて国民の審判を仰ぐ年になる。

 新型コロナウイルスへの対応が最大の政治課題となろう。感染は収束の兆しが見えず、昨年末には英国で広がったコロナ変異種も国内で初確認された。

 首相は「国民のために働く内閣」を掲げるが、コロナ対応は後手に回り続けている。言動も危機感を欠いていると言わざるを得ない。

 肝いりの観光支援事業「Go To トラベル」の推進にこだわり、全国一時停止の判断は遅きに失したと批判を浴びた。全国知事会などが求めているコロナ特措法改正も、医療の逼迫(ひっぱく)感が強まる中でようやく議論を始めた。

 休業や営業時間の短縮を要請されている事業者、解雇・減収の不安を抱える労働者からは、先の見えないコロナ禍に悲鳴の声が上がっている。現状を丁寧に説明し、真摯(しんし)に協力を求める姿勢が不足している。

 それは「政治とカネ」の問題にも共通する。

 安倍前首相が昨年末、衆参の議院運営委員会で「桜を見る会」問題を巡る一連の「虚偽答弁」を謝罪したことに関し、菅首相は一定の説明責任を果たしたと評価した。ただ、自身の官房長官時代の答弁について陳謝はしたが、積極的に疑惑を明らかにし、襟を正そうとする意思は感じ取れなかった。

 疑惑の放置は、政治そのものへの信頼を損ないかねない。ところが、行政府をチェックする立法府は、その認識が甘いのではないか。

 安倍、菅両政権下の国会では、首相をはじめ閣僚らの「指摘はあたらない」「回答を差し控える」といった答弁が常態化している。本質的な議論を避け、審議を軽視する姿勢を許せば、国会は自らの存在意義を否定するに等しい。

 安倍政権の安定した内閣支持率を背景に、与党は衆参の国政選挙で6連勝した。「1強」となったおごりが政権運営の緩みにつながったことは否めない。

 昨年、立憲民主、国民民主両党などが合流し、新たな野党第1党が誕生した。国会に緊張感を取り戻すとともに、衆院選で他の野党勢力とも結束して巨大与党への対抗軸を立てられるかどうかが問われる。

 コロナ禍は経済格差の広がりを浮き彫りにした。少子高齢化に伴う持続可能な社会保障の在り方の議論も道半ばだ。2021年度当初予算案は、財源不足を補うための国債発行が巨額になり、財政再建への道筋は不透明になった。

 感染拡大の影響を最小限に抑えるには機動的な財政支出も必要だろう。ただ、借金は将来世代の負担になる。国会には、国民目線に立って、より丁寧な説明と深い審議を尽くす責任がある。

 感染拡大を防ぐ対策と併せ、コロナ後を見据えた日本の将来像をどう示すのか。政治の在り方に、有権者も目を向けなければならない。