首相や閣僚の答弁拒否回数を調べた桜井准教授。政府側が国会での役割を果たしていないと指摘している(京都市北区・立命館大)

首相や閣僚の答弁拒否回数を調べた桜井准教授。政府側が国会での役割を果たしていないと指摘している(京都市北区・立命館大)

 菅内閣は発足から3カ月が過ぎ、最優先課題とする新型コロナウイルス感染症対策は医療逼迫(ひっぱく)が現実味を帯び、「桜を見る会」疑惑を巡り検察捜査が進む。菅義偉首相(72)は難題と向き合いながら来秋までの衆院解散・総選挙のタイミングを探る。「菅流」意思決定の実相や安倍政権から引き継ぐ政治姿勢を追った。

 首相や閣僚らが国会で「お答えを控える」などと発言し、説明を避ける場面が近年急増していることが、立命館大の桜井啓太准教授(社会福祉学)の調査で分かった。1970年は7回だったが、ピークの2018年は580回にも達し、80倍以上にも膨らんだ。第2次安倍晋三政権が本格スタートした13年以降の増加ぶりが顕著で、菅義偉首相も同様の姿勢を引き継いでいる。

 桜井准教授は日本学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかった問題について、菅首相が国会で「人事に関することであり、お答えを差し控える」と繰り返したことに疑問を持ったという。専門の社会福祉の研究で国会会議録検索システムを活用したことがあったことから、検索語に「答えを控え」「答えについて差し控え」など類似の16パターンを入力し、1970年から2020年まで1年ごとに件数を調べた。

 この結果、1970年は7回で、70年代は30回前後で推移した。その後は緩やかに増えていき、自民党が民主党に政権を奪われた2009年には218回となったが、民主党政権末期の12年は94回まで減少した。

 しかし、同年末に始まった第2次安倍政権では、13年の特定秘密保護法、15年の安保法制の審議を巡って答弁を避ける回数が急カーブを描いて増える。さらに17~19年は18年の580回を頂点にいずれも500回を超えた。安全保障や憲法に関わる審議での発言が多い一方、森友学園問題や「桜を見る会」など安倍前首相にまつわるテーマで説明を避ける姿勢が際立った。

 閣僚別では安倍前首相が最も多い165回、続いて今年にあった検事長定年延長問題などで森雅子前法相が94回、稲田朋美元防衛相が87回、河野太郎行政改革担当相が78回と上位を占めた。閣僚以外に官僚も同様の表現で答弁し、全体の数を押し上げている。

 5日に閉会した臨時国会では、菅首相が衆参の予算委員会で、日本学術会議の会員任命拒否と「桜を見る会」の問題について「答えを差し控える」「答える立場にない」といった答弁を連発。共同通信社の分析では、全体の2割に当たる67回にも上ったことが明らかになっており、説明を避ける傾向は首相が交代しても改善されていない。

 桜井准教授は「国会で国民に説明するという政府の役割が果たされていない。まともに答弁しない姿勢が官僚にも広がっている」と批判。「説明を拒み、異なる他者と向き合わない空気がまん延し、選別する政治や社会の分断が進むことが危惧される」と警鐘を鳴らす。