日本経済と私たちの暮らしを覆う暗雲が一層深まっている。

 新型コロナウイルス感染拡大が止まらない。感染者が最多を更新し、医療が逼迫(ひっぱく)する中、政府は昨春の流行「第1波」以降の景気押し上げ策に急ブレーキを掛けざるをえなくなった。

 菅義偉首相が継続に固執した観光支援策「Go To トラベル」も年末年始に全国一斉停止。大都市圏を中心に、外出や移動、店舗営業をより抑制する要請を強める動きにある。

 政府の掲げる「感染防止と経済回復の両立」の難しさを物語っている。観光、飲食業界などには再び大きな打撃となり、持ち直しの途上だった景気が「二番底」に陥る懸念がある。

 長期化する企業活動や生活への影響をどう乗り越え、「コロナ後」を見据えた日本経済の活路を開くかが大きな課題だ。

 2021年の日本の実質経済成長率は、2%台のプラスに転じる見方が多いが、不確実な要素が大きい。感染収束へ期待されるワクチンは、効果や接種の普及が不透明だ。1年延期された東京五輪・パラリンピックが規模縮小となれば景気刺激は限定的になりかねない。

 さらなる営業制限の要請などで苦境に立つ業者へのきめ細かな財政支援が欠かせない。政府は3度目の追加となる大型経済対策でGoTo事業や雇用調整助成金の特例措置の延長を盛り込んだが、効果的で重点的な活用を図るべきだ。

 コロナ収束まで耐え忍ぶだけでなく、感染防止と両立した新たな生活様式や経済環境の変化への対応が求められている。政府は、コロナ後の成長戦略としてデジタル化と脱炭素化を二枚看板に打ち出した。

 ただ、その中身は生煮えの印象が強い。洋上風力など脱炭素化につながる技術開発を支援する2兆円の基金や、デジタル化で次世代通信規格の研究基金も創設する。

 民間の研究開発、設備投資の呼び水にしたい考えだが、具体的な補助対象も不明確では企業の投資喚起はおぼつかない。

 欧州では環境に配慮して経済再生を図る「グリーンリカバリー」、中国はIT関連の新型インフラ建設に動いている。

 テレワーク拡大など働き方や東京一極集中の見直しを含め、新たな経済社会ビジョンに基づいて施策の具体化を急ぎたい。

 21年度予算案は106兆円超と9年連続で過去最大を更新し、コロナ対策に便乗とも映る膨張ぶりだ。経済優先でなし崩しに財政支出を拡大してきたアベノミクスの延長線上にある。

 大規模な金融緩和と併せ、企業収益の増大が家計に回る好循環を掲げたが、実現しなかった。新年度も企業設備や住宅の投資喚起策が並ぶ一方、困窮者支援など格差是正策は見劣りが否めない。

 大量の金融緩和マネーが流れ込んだ証券市場は昨年末、バブル期以来の高値を付け、実体経済とかけ離れたいびつさだ。

 喫緊のコロナ対策と同時に、近年の経済財政運営の在り方を検証し、見直すなかで新たな経済像と成長戦略を見定めたい。