近江八幡市立総合医療センター(同市土田町)

近江八幡市立総合医療センター(同市土田町)

 滋賀県近江八幡市立総合医療センター(同市土田町)が2016年に行った手術で県内の40代男性に後遺障害があった医療事故について、センターが市条例に違反して議会の議決を経ずに支出できる上限以上の損害賠償費を支払っていたことが6日、京都新聞社の取材で分かった。センターは「支出は雑費名目で上限なく払える」とするが、専門家は「センターは条例を形骸化している」と指摘している。

 センターは16年、鼻の手術で男性の右目の筋肉を損傷させ、物が重複して見えるなど後遺障害8級相当の障害を負わせた。センターは過失を認め、交通費や治療費などとして16~18年度に計930万円を男性に支払った。いずれも議会で議決をしていなかった。

 市病院事業設置条例は「損害賠償を300万円以上支払う場合は議会の議決が必要」とし、議決は単年度決算を基本とする。930万円のうち17年度は520万円で、条例に違反していた。16年度は170万円、18年度は240万円だった。内訳は9割以上が通勤や通院のタクシー代で、残りは別の病院での目の治療費など。会計の費目は16、17年度は雑費、18年度は損害賠償関連などとしていた。

 京都新聞社の取材に対し、センターは「地方公営企業法施行令などから損害賠償費は概算払いができ、支出は適法」とするが、富野暉一郎・福知山公立大名誉教授(地方自治論)は「施行令は条例の制定を前提としており、効力は条例の方が上のため無視できない。損害賠償は基本的に損害賠償費の費目で支出しなければならず『雑費で上限がない』という主張はおかしい」と話す。

 市は昨年3月、3年間の男性への支払金930万円を含む計4640万円の損害賠償費を盛り込んだ予算案を市議会に提出し可決され、男性と示談が成立した。センターは男性側が身元の特定防止を望んだとして事故内容を公表していない。

■「条例を形骸化する行為」

 同志社大の新川達郎教授(行政学)の話 青天井の会計を防ぐために市議会のチェックが必要でそのために条例がある。「概算払い」というセンターの説明が支出の上限規定を打ち消すことにはならず条例違反はおろか、条例を形骸化する行為をしている。市やセンターが内部調査をしていないのなら監査委員が厳しく調査すべきだ。