イランが濃縮度20%のウラン製造に踏み切った。2015年の米国や欧州などとの核合意で上限とされた3・67%を大幅に超える重大な違反である。

 濃縮度を高めれば、核兵器の原料となる高濃縮ウラン獲得までの時間が大幅に短縮できるとされる。軍事転用につながりかねない行為に国際社会は懸念を強めている。

 20日に就任するバイデン次期米大統領は、トランプ政権が一方的に離脱した核合意への復帰を目指す意向を示している。イラン側には、強硬策に出ることで米国に経済制裁の早期解除を迫る狙いがあるとみられる。

 だが、米側に制裁継続の理由を与える逆効果となる可能性がある。イランを敵視するイスラエルが対抗手段に出る恐れもあり、軍事的緊張を高めかねない。

 イランは挑発行為を自制しなければならない。米国や英仏独などは崩壊寸前にある核合意の再構築に向けて対話を急ぐべきだ。

 核合意では、イランが核開発を大幅に制限する見返りに、米国や欧州などが経済制裁を一部解除した。だが、トランプ大統領は制限が期限付きであるなどとして、18年に合意離脱を表明し、制裁を復活させた。

 米国の制裁で経済が混乱するイランは、これまでも合意を超える水準にウラン濃縮度を引き上げてきた。ただ、一気には進めず土壇場で踏みとどまってきたのは、国際協調を重視するロウハニ大統領ら穏健派の存在が大きかったといえよう。

 ところが、国内では保守強硬派が発言力を強めている。昨年12月には、核開発の拡大を政府に義務付ける新法が、穏健派の反対を押し切る形で成立した。

 今回の強硬策には、バイデン氏がイラン対応を後回しにするのではとの懐疑的な見方が保守強硬派に広がったことも背景にあるとみられている。高圧姿勢でイランを追い詰めた米国への不信が招いたとも言えるのではないか。

 バイデン氏は合意復帰の方針を貫くとの見方もあるが、米議会の反発が強まるのは避けられまい。外交を通して核問題の解決を目指す強い意志を国内外に示し、早期の復帰へ指導力を発揮すべきだ。

 一方のイランも、核開発に突き進めば国際社会の理解や同情を失いかねないことを自覚する必要がある。

 実効性のある核不拡散体制を構築するために、国際社会は連携しなければならない。