視界不良の中での船出といえよう。

 2025年の大阪・関西万博の開催が、昨年12月の博覧会国際事務局(BIE、本部・パリ)総会で承認され、正式に決まった。

 政府や運営主体となる日本国際博覧会協会は、決定を受けて万博の基本方針、基本計画を相次いで発表し、開幕に向けた準備を本格化させた。

 だが、新型コロナウイルスの感染拡大で承認手続きは半年ずれ込んでおり、参加国の招致や会場準備の遅れが懸念されている。社会、経済環境が誘致時とは大きく変化している。改めて開催意義を見つめ直すべきだろう。

 政府の基本方針によると、大阪市の人工島・夢洲で25年4月13日~10月13日に開く。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、デジタル技術や感染症対策、脱炭素社会の在り方を世界に発信するとしている。

 万博会場は、人を運ぶ「空飛ぶ車」や自動配送ロボットの体験など「未来社会の実験場」と位置づける。世界中からオンライン参加もできるとする一方、前回05年の愛知万博を3割近く上回る来場者2820万人を見込んだ。収束が見通せないコロナ禍の状況と会場内の感染対策を十分踏まえているだろうか。

 課題は山積している。

 150カ国の参加を目標とするが、招致活動は渡航制限や、昨秋に開幕予定だったドバイ万博が1年延期された影響で進んでいない。参加確認の遅れは、会場設計やパビリオン配置などの準備日程にも響きかねない。

 政府は発展途上国に出展費用など240億円を支援する方針だが、コロナ禍で二の足を踏む国々が参加しやすい形態や仕組みも工夫すべきだろう。

 さらに問題なのが、会場建設費が当初想定の1・5倍の最大1850億円に膨らむことだ。基本計画で示された会場デザインで、円周2キロの環状の大屋根を整備する設計に変更され、感染症・暑さ対策、建築単価の上昇も織り込んだためという。

 会場建設費は国と大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担する仕組みだ。それぞれ200億円の負担増を受け入れる方向だが、コロナ禍による税収減や事業環境が厳しくなる中、巨額の税金投入や企業寄付の上積みが広く理解されるだろうか。

 会場の夢洲では、大阪府・市がカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備との相乗効果を掲げてきた。だが、コロナ禍で業績悪化したIR事業者の誘致は、実現しても万博後となる。需要が不透明なため、大阪メトロや京阪電鉄などの延伸構想もめどは立っていない。

 基本計画では、コロナ禍を乗り越えた先の「新たな時代に向けた国家プロジェクト」と明記されたが、大阪で再び万博を開く意義そのものが問われている。

 もともと東京五輪後の景気失速を和らげ、大阪にとっても「負の遺産」の夢洲を活用したい狙いの万博誘致だったのは否めないだろう。コロナ禍で激変した世界に向け、新たな時代の社会像を本当に示せるのか、疑問は拭えない。