長距離選手の健康問題について、さらなる研究の必要性を話す河合さん(京都市伏見区・龍大)

長距離選手の健康問題について、さらなる研究の必要性を話す河合さん(京都市伏見区・龍大)

 女性アスリートの過度な食事制限や体重管理は、無月経や疲労骨折など健康問題につながる恐れがある。体の軽さが重視されがちな中長距離ランナーはリスクが高く、日本陸連は警鐘を鳴らす。「京都 女子駅伝・中長距離競技会」(17日、たけびしスタジアム京都)を前に、河合美香・龍谷大准教授(スポーツ栄養学)に、現状と背景を聞いた。

 ―東京五輪女子1万メートル代表の新谷仁美(積水化学)が、自らの過去の無月経や食事の大切さを発信し、注目されている。

 「実績を出した人がしっかり食事していると伝わり、月経が大事だと発信することは重みがある。選手に必要な食事はトレーニングの内容による。新谷さんは走り方や代謝、精神面、経験を総合的に使うことで好記録が出たのでは」

 ―女性選手の健康問題への理解が深まっていると感じるか。

 「ここ数年で女性アスリートの体の不調に関して研究が進み、専門家も実態や対処法を発信している。一方、今も長距離選手の月経不順や初潮の遅れは多い。長距離に特化した研究が必要だ」

 「改善が進まない背景にスポーツの歴史があると思う。女子マラソンが五輪種目になったのは1984年ロサンゼルス大会。スポーツが男性中心の時期が長かった」

 「指導者だけではなく、選手が『痩せていなくては』と思い込んでいる場合がある。実業団選手にありがちで、高校で注目されてベスト記録が出ると、その時の体重が理想だと頭にインプットされてしまうことがある」

 ―女性ランナーに関してどんな研究が必要と考えているか。

 「選手が月経の痛み止めや、周期をコントロールする薬を使う場合がある。体や競技への影響について、長距離の特性を踏まえた研究があればと思う」

 「所属するランニング学会のプロジェクトとして、食事や月経、薬の使い方、摂食障害、貧血など、長距離に特化した調査を進めたい。医学、心理学、人権問題などの専門家と連携し、私は栄養学の立場からできることをやっていきたい」

≪女性アスリートの健康問題≫

 練習量に見合った食事が取れず「エネルギー不足」の状態に陥ると「無月経」や「骨粗しょう症」につながる。これらは女性アスリートの三主徴と呼ばれ、疲労骨折、貧血のリスクを高める。近年、貧血の治療で安易に鉄剤注射が使われている実態が明らかになり、日本陸連は2019年、不適切な鉄剤注射防止のガイドラインを公表。三主徴が背景になっているとして、食事の見直しや婦人科を受診する重要性を強調している。

 かわい・みか 1967年、京都市生まれ。市立船橋高(千葉)で故小出義雄監督の指導を受け、筑波大、リクルートで長距離選手として活躍。筑波大大学院でスポーツ栄養学を学び、2000年シドニー五輪マラソン金メダルの高橋尚子さんらの栄養サポートに携わった。全国女子駅伝は第2回大会の1区と第3回大会の2区でそれぞれ区間賞。