菅義偉首相が重要政策とする携帯電話料金の引き下げを巡り、KDDI(au)がきのう、新料金プランを発表し、携帯大手3社の対応が出そろった。

 高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの運用も始まっており、各社の競争は一層、激化する見通しだ。

 こうした中、大手ソフトバンクの元社員で、現在は競合する楽天モバイルに転職している社員が、営業秘密を持ち出したとして、不正競争防止法違反の疑いで、警視庁に今週、逮捕された。

 競争を勝ち抜きたいとの思惑は誰しもあろうが、不法行為は許されるものではない。事件の真相解明を強く求めたい。

 これまでの調べでは、容疑者はソフトバンクで通信ネットワークの構築関連業務を担当していて、一昨年暮れに私用のパソコンを使って、5Gの技術情報などを複数回、不正に持ち出した。その直後に転職した、とされる。

 ソフトバンクは、自社の営業秘密がすでに利用されている可能性が高いとして、楽天モバイルに対して民事訴訟を起こす方針を明らかにしている。

 これに対して楽天側は、営業秘密を業務に利用した事実は確認されていない、とする。

 とはいえ、大手に遅れて携帯電話事業に参入し、通信ネットワークの整備が不十分だと指摘されているだけに、ライバル社の情報を得たいとの動機があったのではないか、との見方もある。

 今回の事件についての説明責任を、しっかりと果たす必要があるだろう。

 企業の営業秘密が不正に持ち出された事件は、過去にも頻発している。

 中でも、東芝のフラッシュメモリーの研究データが韓国企業に流出し、提携先の半導体メーカー元技術者が不正競争防止法違反の疑いで逮捕された事件は、記憶に残っている。

 これを受けて経済産業省は、2015年に同法を改正し、違反者の罰金を大幅に引き上げた。

 それにもかかわらず、警察の摘発件数は近年、顕著な増加傾向にあるという。インターネットの技術革新によって、営業秘密の取得と証拠の隠滅が容易になったためとみられている。

 営業秘密は、企業が多大な労力とコストをかけて得た知的財産である。お互いに尊重し合うモラルを、産業界全体で培わねばならないようだ。