新型コロナウイルス感染拡大防止につながる法改正になるのか。

 政府が、18日開会予定の通常国会に提案するコロナ特措法と感染症法の改正案の概要を示した。

 特措法改正案では、緊急事態宣言の前段階として首相が公示する「予防的措置」を設け、宣言前でもこの措置下なら知事が営業時間短縮などの要請に応じない事業者に「命令」でき、拒んだ事業者に行政罰の過料を科せるとする。

 感染症法改正案には、入院を拒否したり疫学調査を拒んだりした感染者に対して、懲役や罰金の刑事罰の導入を盛り込むという。

 現行の特措法は知事の要請に応じない場合の措置が事業者名の公表などにとどまり、徹底を欠くとも指摘されている。感染対策に関する権限を強化するよう、全国知事会が改正を求めていた。

 感染拡大防止には、一定の規制強化も必要だろう。ただ、罰則を伴う強制力は、基本的人権に関わる問題もはらむ。法の実効性との間でどのようにバランスを図るのか、慎重な議論が必要だ。

 そもそも、菅義偉首相は法改正について「給付金と罰則をセットにする」と主張してきた。その給付金などの財政支援の具体策について、政府側は与野党との協議会でも明確に示していない。

 有効な仕組みにしようというなら、支援策の内容こそ重要ではないか。その議論が詰まっていないのに罰則導入論が先行するのは本末転倒と言わざるを得ない。

 共同通信が9、10日に行った全国世論調査では、要請に従わない飲食店への罰則導入に反対が48%で、賛成の42%を上回った。

 休業や時短営業への協力要請は呼び掛けだけでは限界があるのは確かだ。しかし、罰則を振りかざして効果が上がるとも言えまい。

 行政が強制力を手にしようとする理由を、後手に回った対応への批判をかわすためと勘ぐられてしまえば、幅広い理解と協力は得にくくなる。国民の意見を聞き、現行法の問題点を洗いだすべきだ。

 与党は二つの改正案を「束ね法案」として1本にまとめ、スピード成立を図ろうとの構えだ。

 迅速な対応が求められ、私権制限につながる改正案を駆け足で議論せざるを得ない状況だが、おざなりな審議は感染対応の現場を混乱させ、禍根を残しかねない。

 本来なら、昨年の臨時国会を延長して内容を煮詰めておくべきだった。その機会を設けず、感染拡大が深刻化するまで準備を怠ってきた政府与党の責任は大きい。