米連邦議会議事堂が襲撃された事件を巡り、議会下院が「反乱扇動」の責任を問い、トランプ大統領を弾劾訴追した。

 トランプ氏は退任直前だが、2019年のウクライナ疑惑に続き米史上初めて2回弾劾訴追された大統領になった。これが分断と対立を深めた4年間のトランプ政治の結末とすれば残念と言うほかない。

 下院は12日、ペンス副大統領に対し、憲法の規定を発動してトランプ氏の解任に動くよう求める異例の決議案を可決。ペンス氏が拒否したため、13日には弾劾訴追決議案を賛成多数で可決した。

 弾劾案の採決では、提案した民主党の全議員に加え、与党共和党議員10人も同調した。決議は上院へ送付され、弾劾裁判はバイデン次期政権が発足する20日以降に始まる見通しという。

 事件は6日、トランプ氏の支持者らが暴徒化し、大統領選の結果の認定手続きを進めていた議会を占拠、警官ら5人が死亡した。

 トランプ氏は「議事堂まで行進するぞ。私も行く」とあおったとされる。強大な影響力を持つ大統領が実力行使を暗に促し、混乱と惨事を招いた責任は重い。

 公正な選挙を損なう行為であり、民主主義の根幹を揺るがす暴挙と非難されても致し方ない。弾劾訴追へ背中を押したのは、強まる世論の圧力とも言えよう。

 トランプ氏の任期は1週間を切った。あえて罷免を求めるのはよほどのことだ。トランプ氏が国家にとって重大な脅威、との認識は超党派で浸透しつつある。

 大統領選への再出馬を封じる狙いを別にしても、民主主義を冒瀆(ぼうとく)した事件の衝撃を考えれば責任を明確化する意味は大きい。トランプ政治を総括することにもなる。

 20日に迫ったバイデン氏の大統領就任式に向け、武装したトランプ派による抗議活動の情報もあり、首都ワシントンは厳戒態勢に入りつつある。政権移行に悪影響を及ぼしかねず、政治的空白が生じれば損失は計り知れない。

 事件後、トランプ氏は「暴力を明確に非難する」と表明する一方、弾劾訴追は「民主党による魔女狩りだ」と徹底抗戦の構えを示している。自らが重大な事態を招いた反省や謝罪の言葉は一切ない。任期満了を待たず、潔く辞任を決断すべきではないか。

 米国社会の亀裂が一層深まったことで、国政の混乱が長引くのは避けねばならない。修復には与野党が互いに立場を超え、民主政治の再建に努める必要がある。