北朝鮮の首都平壌で一昨日、軍事パレードが行われた。

 新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とみられる兵器などが公開され、最高指導者の金正恩氏が閲兵した。

 5年ぶりに朝鮮労働党大会を開催したことを記念する行事で、米国でバイデン新政権が発足する直前に軍事力を誇示する狙いがあったようだ。

 大会は党の最高指導機関で、今月5日から12日まで開かれた。

 金氏は、父の正日氏と同じ「総書記」に就任し、「最大の主敵である米国を制圧、屈服させる」と演説した。

 党内での権威をさらに高めるとともに、朝鮮半島の非核化を掲げて会談を重ねたトランプ米大統領の退場を見据え、核戦力の増強路線に回帰したといえる。

 東アジアの非核化がますます遠のいた。憂うべき状況である。

 ただ、大会では、最高指導者として10年目を迎えた金氏の統治スタイルに、変化もみられた。これには、留意しておきたい。

 前回の大会後の成果として、核・ミサイル開発の進展を挙げて、「祖国と人民の運命を守る保証を手に入れた」と胸を張った。

 一方で、昨年までの国家経済発展5カ年戦略に盛り込んだ目標に関して、「ほぼ全ての部門で遠く達成できなかった」と述べるなど、振るわない経済情勢を率直に認めた。

 核・ミサイル開発に対する国連の制裁が長期化し、自然災害も起きたことに加え、新型コロナウイルスへの対策で、昨年1月からは国境を封鎖し、中国との貿易が激減した。

 昨年の経済成長率は、最悪のマイナス8・5%に落ち込んだとの予想もある。食料難は、解決されないままとされている。

 国内の現状について、軍事力を強調するだけでは、民心を引き留められないと認識している様子が、うかがえる。

 大会前には、労働者や農民からの意見聴取を実施するなど、国民の声に耳を傾ける姿勢をアピールしたという。

 当面は、外国に頼らない「自力更生」による経済再建に取り組まざるを得ない。生活の向上を重視して、国民を鼓舞する政策を選択したのだろう。

 これ以上、窮状が続くと、日米韓との対話再開を図るかもしれない。東アジアの緊張緩和につながる兆候があるならば、日本政府は見逃してはならない。