会員制交流サイト(SNS)を運営する米IT企業の言論に及ぼす強大な影響力を垣間見た思いがする。

 トランプ米大統領が言いたいことを発信するのに多用したSNSのアカウントを、ツイッターやフェイスブックが相次いで停止した。

 大統領支持者による連邦議会襲撃を受け、トランプ氏の投稿が再び暴力を煽動する危険がある、と判断したためだ。大統領選敗北を認めない発言や、これまでの暴力容認と受け止められる言動を考えれば、仕方あるまい。

 一方で、民間企業の一存で大統領の発言を封じることができるものか、といった疑問も拭えない。

 米国内では「当然の対応」との受け止めが多いそうだ。一方で「検閲だ」という反発も出ている。賛否両論を踏まえ、前代未聞ともいえる大統領のSNS停止の是非を巡り、もっと議論が必要だろう。

 トランプ氏は虚偽や排斥、差別に満ちた発信を繰り返してきたが、ツイッターは規約違反と認めつつ警告にとどめてきた。市民の知る権利と公職者の説明責任を確保する見地からの特例という。

 今回停止したのは、公益性よりトランプ氏の再煽動の危険性が高いと見たからだ。

 トランプ氏のフォロワー数は世界に約9千万人。SNSを頻繁に使うことで影響力を高めており、SNSが果たした役割は大きい。

 米国では憲法修正第1条によって、ヘイトスピーチを含め表現の自由が広く保障される。ただ、米通信品位法によってSNSの投稿内容の編集、削除が運営企業に認められている。大統領のSNS停止が可能なのである。

 トランプ支持者が集まる新興SNSも使えなくなっている。米グーグルなどがアプリ配信を停止したためだ。

 米大統領のアカウント停止について、ドイツのメルケル首相は「法に基づくべきだ」と報道官を通じて批判した。欧州では有害な投稿を削除するルールを、企業ではなく社会の中で整備しようとしている。その違いは大きい。

 SNSは世界に広がる言論情報ツールだ。運営する企業は巨大化し、言論に対する潜在的な力は絶大になっている。

 人権を守り、自由で多様な言論をどう保障するか。一企業のルールに委ねるのではなく、透明で公正な議論を社会の中で重ねる。SNS時代にふさわしい仕組みを民主的プロセスで作ってはどうだろうか。