新型コロナウイルスが、どのように感染拡大したのか。改めて確認しておくのは、大事である。
感染への対応について検証している世界保健機関(WHO)の独立委員会が今週、中間報告を公表した。
最初に感染が確認された中国に初動の遅れがあったと指摘し、WHOの権限不足や、米中を念頭に置いて国家間の政治的対立の影響にも言及した。
各国などは、その内容を重く受け止め、世界全体で感染防止を図るための指針とすべきだ。
独立委は、コロナ対応を打ち出した昨年5月のWHO総会決議に基づき設置された。リベリアの前大統領とニュージーランドの元首相が共同委員長を務め、調査に当たっている。
中間報告は、「中国の保健当局は昨年1月の段階で、より強力な公衆衛生上の措置を取れたはずだ」と強調した。
中国の武漢市で、最初の感染が確認されたのは一昨年の12月だとされているが、当局は年明けの都市封鎖直前まで認めようとしなかったという。従って、当然の指摘といえる。
中国外務省の報道局長は「すぐさま断固とした方策を決め、感染と死亡を減らした」と反論したものの、事実の裏付けは乏しい。
独立委とは別のWHO調査団が先日、新型コロナの起源解明に向けて中国入りした。中国は、これに協力し、きちんと説明責任を果たしてもらいたい。
WHOの取り組みについて独立委は、新たな感染症が発生した際に、調査や支援の要員を自由に派遣できず、「期待された任務を果たすには権限が不足している」とした。
さらに、最高レベルの警報である緊急事態の宣言は遅かったのではないか、としている。
宣言後、各国が即座に大胆な感染防止策を取ることはなく、「警告はあまりにも多くの国で無視された」と嘆いた。
中国との対立を深めるトランプ米政権が、WHO脱退を表明したことなどを踏まえたのだろう。政治的対立が、コロナ対応にも影響したと認めている。
中間報告は、WHOが、その機能を十分発揮できるような態勢をつくるよう、国際社会に求めたといえそうだ。関係者は耳を傾け、改善を図ってほしい。
最終報告は5月の総会に提出される予定だが、それを待つことなく対処することも必要だ。