三日月知事の記者会見の内容を手話で伝える滋賀県職員(左)=大津市、県危機管理センター

三日月知事の記者会見の内容を手話で伝える滋賀県職員(左)=大津市、県危機管理センター

 知事の記者会見などで欠かせない存在となっている手話通訳。特に新型コロナウイルス禍の今は緊急性の高いメッセージを聴覚障害者に伝える重要な役割を担っているが、雇用形態の不安定さが問題視されている。専任職員を置く滋賀県と県内13市のうち、1市以外は任期1年の非正規職員で、低賃金や雇用継続の不確実さがネックとなり、欠員補充できていない自治体もある。

 手話通訳の専任職員には、厚労省令に基づく手話通訳士か、全国統一試験に合格した都道府県認定の手話通訳者かの公的な資格要件を課す自治体が多い。制度開始から2019年までの平均合格率は手話通訳士15%、全国統一試験22・3%と難関の上、同試験を受験するためには、3~5年かけて養成講座などを修了する必要がある。

 滋賀県内で正規職員として雇用しているのは栗東市の1人だけ。県と13市は1~3人を、雇用期間が年度末までの「会計年度任用職員」として採用している。

 欠員が生じているのは県と、野洲、東近江の2市。給与は月11~19万円(パートは月額換算)。東近江市は18年度から、県と野洲市は19年度から各1人の欠員が続いている。

 専任職員は、窓口での通訳業務に加え、通院時の通訳者派遣の手配などの事務も担う。2市では募集に対する応募自体がないといい、理由について野洲市は「資格を持つ人が少ない」、東近江市は「任期が1年で身分的に安定しないからでは」などとみる。

 市町や企業からの依頼を受けて手話通訳を派遣する県立聴覚障害者センター(草津市)の木下博所長は「手話通訳は長く『熱心な主婦頼み』だった。専門職として十分に認知されておらず、労働としての身分が脆弱(ぜいじゃく)」と指摘する。

 全国手話通訳問題研究会(京都市)が15年に行った調査では、自治体で雇用されている手話通訳の90%以上が非正規職員だった。全日本ろうあ連盟(東京都)は昨年9月、市町村の手話通訳者を正職員として雇用するよう厚労相に要望書を提出した。

 手話通訳はコロナ禍での情報保障だけでなく、障害者差別解消法で義務化された合理的配慮としてもニーズが高まる。県は昨年4月から、知事の定例、臨時会見に手話通訳の職員を同席させており、会見の動画をサイトにアップして聴覚障害者に情報を伝えている。

 龍谷大の立田瑞穂講師(障害福祉学)は「11年の改正障害者基本法で手話が言語と規定されてから10年たつが、多様な場で手話通訳が養成されてきたとはいえない」と指摘した上で、「手話に興味を持つ学生は少なくない。学びの仕組みづくりに加え、正規職員の道も用意するなど働き方の可能性を広げることが大切だ」と話している。