国会議員夫妻による前代未聞の大規模買収事件の構図が浮き彫りにされたといえよう。

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡り、地元議員らを買収した公選法違反に問われた参院議員河井案里被告に、東京地裁が懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

 判決は「民主主義の根幹である選挙の公正を害した」と指弾した。案里議員はもとより地元、中央政界は重く受け止めるべきだ。

 判決によると、案里議員は夫で元法相の衆院議員克行被告と共謀し、19年3~5月、票の取りまとめの報酬として県議4人に計160万円を渡したという。

 案里議員は「県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」と違法性を否定したが、判決は厳しい選挙情勢や授受の状況などを総合判断して「選挙買収だった」と退けた。

 注目すべきは、元法相が現金供与の「全体を計画し、取り仕切っていた」との認定だ。今回の事件では地元の県議や首長ら100人に計2900万円余りが配られたとされ、案里議員の共謀が問われたのはごく一部である。

 一連の買収の罪で別に公判中の元法相の主導的な役割を位置づけた形だ。自宅からは現金の供与先や配分などの管理リストが押収された。これまで証人出廷した現金受領者36人のうち34人が「選挙の応援や集票の依頼だと思った」との認識を示した。大がかりな選挙買収を裏付けている。

 夫妻は逮捕前日に自民党を離党したが、議員辞職を拒み、事件の説明をしていない。有罪が確定した秘書の連座制適用を求める「百日裁判」も、最終確定して失職するまで相当な時間がかかる。

 議員の活動も説明責任も果たせないなら辞職すべきではないか。

 政府・自民党の責任も見過ごせない。党本部は参院選前に夫妻側に計1億5千万円を提供した。多くは税金による政党交付金であり、供与資金に使われた疑惑を党自身で調査し、説明する責任がある。

 今回の事件を端緒に吉川貴盛元農相の収賄事件が発覚。「政治とカネ」問題では安倍晋三前政権の大臣、副大臣経験者3人が立件される異常事態だ。金権腐敗の実態解明と再発防止に向けた政府、国会の真摯(しんし)な取り組みが求められよう。

 今回の事件では現金を受け取った地元議員らの刑事責任が問われていない。捜査の公正さに疑念を生みかねない検察の姿勢には疑問が残った。