東京五輪・パラリンピックの行方が混沌(こんとん)としている。

 新型コロナウイルスの影響で今夏に延期されたが、開幕まで半年となっても、国内外で感染の急拡大に歯止めがかからないからだ。

 政府は11都府県に非常事態宣言を再発令することを余儀なくされたが、懸念されていた医療の逼迫(ひっぱく)は都市部を中心に深刻化し、祭典ムードにはほど遠い状況だ。

 それでも菅義偉首相は五輪を「人類が新型コロナに打ち勝った証し」として開催する姿勢を崩していない。

 21日の衆院代表質問では「ワクチンを前提としなくても安全、安心な大会を開催できるよう準備を進める」と答弁し、あらためて実施への強い意欲を示した。

 感染の厳しい現実を直視しているとは思えない。

 米ジョンズ・ホプキンズ大の集計では、世界の感染者は1月中旬の時点で9300万人、死者は200万人を超え、増加ペースは加速している。

 日本でも、累計感染者数は35万人を超え、感染力が強いとされる変異種による感染も起きている。

 そんな状況下で本当に開催は可能なのだろうか。

 各国の代表選考会は無事できるのか、最大約3万人の選手やスタッフらが活動する選手村でクラスター(感染者集団)が発生しないか、など懸念材料を挙げればきりがない。

 大会では、医師や看護師ら1万人以上が競技場などで選手や観客の医療にあたる計画だが、ただでさえマンパワーが足りない医療現場をさらに追い詰める心配もある。

 共同通信社の世論調査では、今夏開催の「中止」「再延期」を合わせた見直し派は80・1%に上った。長引くコロナ禍が五輪への期待をしぼませた形だ。

 状況が好転しなければ、昨年の延期決定の時のように、各国の国内オリンピック委員会(NOC)や国際競技連盟から五輪派遣を懸念する声が出ることも十分ありうる。

 既に、ロイター通信のインタビューで河野太郎行政改革担当相が「どちらに転ぶか分からない」と発言したのを受け、米有力紙ニューヨーク・タイムズなど海外メディアが開催を危ぶむ報道をしている。

 さらに英紙タイムズは連立与党幹部の話として「日本政府が中止せざるを得ないと内々に結論付けた」と伝え、「今は2032年大会の開催確保に焦点が当てられている」とした。

 政府は「そのような事実はない」と否定するが、選択肢の一つとして延期の議論は真剣にされてよいのではないか。ボートの金メダリストらからも24年に再延期し、24年パリ五輪、28年ロサンゼルス五輪を4年ずつ順送りする案などが出ている。

 政府や大会組織委員会は、開催の可否や観客の上限などについて、聖火リレーが始まる3月25日までに決める見通しだ。

 開催を目指すなら、早期に感染を食い止め、「第3波」を抑えこむことが必要だ。

 それなくして「安全、安心な大会」はありえない。