新型コロナウイルスの感染拡大は、介護の現場に大きな影響を及ぼしている。

 東京商工リサーチのまとめでは、昨年の介護事業者の倒産は118件で過去最多になった。自主的な休廃業や解散も455件と前年より15%増え、これまでで最も多くなった。

 感染への不安から通所サービスや訪問介護の利用が落ち込んだほか、消毒液など衛生用品の購入経費もかさみ、事業収益を圧迫している。感染拡大に伴う労働環境の変化で職員の離職が増えており、人材確保がより難しくなっていることも一因とみられている。

 影響が長期化すれば、さらに倒産や休廃業が増え、必要な介護サービスが受けられなくなる可能性がある。経営面への支援と併せ、感染リスクにさらされながら働く介護従事者を支える対策が急がれる。

 食事や入浴、排せつの介助など、介護の現場では高齢者との密な接触が避けられない。多くの施設は面会を制限したり、外出を減らしたりしているほか、職員も手袋や使い捨てのエプロンなどを着用して業務にあたるなど、「3密」を極力回避する取り組みを続けている。

 厚生労働省は、介護サービスを提供する事業所に支払う介護報酬について、4月から全体で0・7%引き上げる方針を決めている。

 新型コロナ対策として、9月までは全サービスの基本報酬を0・1%増やすほか、通所介護や通所リハビリでは、前年度平均より利用者が減った場合に基本報酬を3カ月間上乗せする仕組みも導入するという。

 苦境にある事業者の経営改善に一定の効果は期待できよう。ただ、それだけで介護サービスの提供体制が維持できるかは見通せない。

 政府は、感染の「第1波」に合わせて感染者に接する現場の介護職員らに慰労金として最大20万円を支給する制度を設けていたが、対象期間は昨年6月末で終了している。その後の感染拡大で、高齢者施設でクラスター(感染者集団)の発生が相次ぐなど、対応に追われる現場の負荷は増している。

 過酷な労働に見合う待遇の改善が伴わなければ、介護職員の離職に拍車を掛けかねない。

 介護現場の支援に関しては、野党各会派が昨年7月以降のコロナ発生や濃厚接触者への対応についても「第1波」に準じた措置を講じ、慰労金を支給する法案を衆院に議員立法で提出している。早急に審議する必要がある。

 もともと介護従事者の賃金は仕事の負荷が重い割に低く、介護職員の平均月給は全産業平均に比べて約9万円少ない。

 団塊の世代が全員75歳以上になる2025年には、介護職員が約34万人不足するとの推計がある。高まる介護需要に新型コロナのような未知の感染症対応が重なれば、現場が追いつけなくなる恐れもある。

 処遇の改善も含め、介護提供体制の抜本的な見直しを進める必要がある。