強権的とされるプーチン大統領の治めるロシアで、近年にない大規模なデモが起きた。

 反体制派ナワリヌイ氏の逮捕に抗議するもので、100都市以上で行われた。首都モスクワには、4万人が集まった。当局による拘束者は、全国で3500人を超えたと、人権団体が明らかにした。

 街頭に繰り出した参加者は、大統領の退陣を強く訴えていた。デモが政権への打撃になったのは、間違いなかろう。

 ロシアでは、9月に下院選が予定されている。デモの影響を見極めておきたい。

 ナワリヌイ氏は昨年8月、航空機で国内を移動中に意識不明の重体となり、ドイツの病院に運ばれた。毒殺が企てられたようで、英国の調査報道機関などがロシア当局の関与を指摘している。

 逮捕されたのは、療養先から帰国した今月17日で、モスクワの空港に到着した直後だった。

 当局は、同氏の帰国で、再び反体制運動が強まるのを懸念し、逮捕したのだろう。

 しかし、反対派を力で封じ込めるようなやり方は、かえって国民の反発を招いたのではないか。

 ナワリヌイ氏の陣営は、毒殺未遂に当局が関わったとする調査の内容や、プーチン氏が南部の黒海沿岸に所有しているとする「宮殿」のような邸宅の様子を、インターネット上に流した。

 こうした情報も加わり、政権を批判し、プロパガンダ(政治宣伝)を信用しない若者の憤りが一層高まった、との見方がある。

 プーチン大統領は、ロシアのリーダーを、実質的に20年以上も続けている。

 2024年の任期満了後は続投できないとする憲法を、昨年7月に改正した。大統領の任期を2期12年に制限する一方で、現職には適用しないとの例外規定を設け、事実上、「終身大統領」になろうとしているとみられる。

 今回のデモでは、長期支配に対する国民の飽きと不満が、如実に表れた、といえそうだ。

 参加者を多数、拘束したロシアの対応には、米国務省が「強く非難する」との談話を出した。欧州連合(EU)の外交安全保障上級代表と英国外務省も、遺憾の意や深い懸念を示している。

 プーチン政権はナワリヌイ氏を「米情報機関の協力者」と断じ、欧米の非難を「内政干渉だ」と主張する。だが、それだけでは、いつまでも長期支配の動揺を抑えることはできそうにない。