力ずくで従わせようというやり方に偏っていないか。

 政府は、新型コロナウイルス特別措置法と感染症法の改正案を国会に提出し、審議が始まった。

 閣議決定した改正案は、営業時間の短縮などの命令に従わなかった事業者や、入院勧告を拒んだ感染者らに対する罰則導入が柱だ。

 喫緊の課題であるコロナ感染を食い止める対策の実効性を高めるためという。政府・与党は2月初旬にも成立を目指している。

 罰則による強権を振りかざすことが、本当に感染抑止の効果と幅広い協力につながるのだろうか。見過ごせない多くの疑問と懸念をはらんでいる。

 特措法改正案では、緊急事態宣言の前段階として「まん延防止等重点措置」を新設。都道府県知事は時短などの要請に応じない事業者に「命令」ができるとし、拒んだ場合は行政罰の過料として宣言下では50万円以下、重点措置下で30万円以下を科すとしている。

 だが、重点措置を適用する要件や範囲は不明確で、政令で定めるとする。私権制限を強めるのに発令、延長を国会への報告で済ますのでは恣意(しい)的運用の恐れが拭えない。宣言を含め基準の明確化と国会承認によるチェックが必要だ。

 「罰則とセット」(菅義偉首相)とした事業者支援は「必要な財政上の措置を効果的に講ずる」と国や自治体に義務付けたが、中身は曖昧だ。現在の一律的な「協力金」は事業規模に即さず不公平との不満が強い。損失額に応じた補償の考え方が求められよう。

 感染症法改正案では、知事の入院勧告や保健所の調査を拒めば、刑事罰の罰金や懲役を科すと明記した。だが、罰則を恐れて検査を受けなかったり、感染を隠したりして潜在化し、抑止に逆行しかねないと専門家は指摘している。

 そもそも入院や調査の拒否がどの程度あるのか、立法化の根拠が明らかでない。拒否に「正当な理由」があるかの調査と対処で保健所の負担がさらに増える懸念もある。刑事罰は行き過ぎであり、取り消すべきだ。

 今回の改正案からは、後手に回った対策への批判をかわし、権限強化で打開しようとする政府の思惑が透ける。罰則に慎重な世論をにらみ、与野党は早くも修正協議に入るが、拙速に「落とし所」を探るのでは対策の効果も国民の安心も得られまい。

 しっかり問題点を洗い出し、どんな手段と支援策、訴え方ならコロナを封じる国民の行動と協力を促せるか、丁寧な議論が必要だ。