重要文化財「判比量論」断簡 8世紀

<ミュージアムのちから コロナ禍に考える>

 大谷大学(京都市北区)では2001年、開学100年の節目を控え、博物館設立構想が起こった。同大学は古典籍の宝庫だ。重要文化財「判比量論」断簡をはじめ、東本願寺の子弟教育機関「学寮」で使用された典籍、近代以降に収集されたお経の原典類などを多数所蔵する。展示施設があれば仏教文化財の情報発信拠点になり、学生の博物館学学習にも役立つ。

 03年に開館。同大学教授・学芸員の宮﨑健司さんは「小さい博物館だが頑張ってきた」と振り返る。所蔵品だけでなく、他施設から借りた文化財やドイツなど国外の文物も展示した。韓国の大学博物館と交流協定を結び、作品を借りたこともある。作品に関する考え方や図録編集方法の違いで試行錯誤を重ね、その経験が財産になった。

 特別展のほか、春夏秋冬に企画展を行っている。特徴的なのは春だ。大学の歴史を「大学の前身・学寮の時代」「歴代学長の肖像」など四つに分け、4年サイクルで紹介する。学生は4年間で大学史が把握できる。

 「私立大学は建学精神が存在意義。どんな願いで設立され、何が期待されているのか。それを知れば学ぶ意識も変わる」と宮﨑さんは力を込める。

 夏は館蔵の優品、秋は同じく館蔵の重要文化財を紹介し、併せて博物館学課程を受講する学生が「実習生展」を企画する。学生にとって文化財に生で触れる機会だ。古文書の墨の濃淡、紙の繊維の質などは、現物でなければ分からない。

「大般若経」巻第一 久多自治振興会蔵 建保2(1214)年

 冬は京都や地域に関する展示を行う。館蔵品には京都に関わる地図類や拓本も豊富だ。左京区久多の自治振興会が所蔵する大般若経を調査したところ、鎌倉初期の古写経と分かり、市指定文化財となった。経典は地元の行事で使われていたものだ。お披露目展には地元の人たちが約2時間かけて訪れ、誇らしげに見入っていたという。

「皇太子聖徳奉讃」 親鸞筆 鎌倉時代(13世紀)

 宮﨑さんも大学業務の傍ら、現物に接する機会を大切にしている。社寺の調査で古文書に触れる際、内容は事前に知っていても紙の接ぎ目や装丁の状態、裏に書かれた文字など、実物からしかわからない多くのことを教えられるという。何より「バッテリーを充電する」ような、研究者として至福の時間なのだとほほ笑む。

 

 大谷大学博物館 大学図書館が貴重書として収蔵していた仏教関係の典籍類に加え、拓本、絵画、古瓦、考古遺物などを所蔵する。草書体で書かれた重要文化財「判比量論」断簡は新羅から伝わったと推定される。8世紀の光明皇后(聖武天皇の皇后)が母・県犬養三千代から引き継いだとされ、来歴の上でも興味深い。「皇太子聖徳奉讃」は独特の書体に親鸞の人となりについての想像が膨らむ。京都市北区小山上総町。075(411)8483。