新型コロナウイルスの感染拡大で経済の先行きにも不安感が高まる中、今年の春闘が本格化した。

 企業の経営環境が悪化していることから、経団連は事業継続と雇用維持の最優先を掲げている。

 一方、連合は2%程度のベースアップ(ベア)を求め、賃上げ継続の流れを維持したいとする。

 労使ともに厳しい状況だが、知恵を出し合い、納得できる道筋を探る努力を重ねてほしい。

 春闘は2014年以来、政府が求める形で賃上げが続いている。

 中西宏明経団連会長はきのうの神津里季生連合会長との会談で、日本の賃金水準が経済協力開発機構(OECD)加盟国で下位になっているとして、賃上げが引き続き重要課題との認識を示した。

 コロナ下での企業業績はまだら模様だ。飲食や宿泊など影響が深刻な業界がある一方で、デジタル化や巣ごもり需要で勢いづく会社もある。経団連は一律の賃金引き上げを「現実的でない」とする。

 労働側の対応も一様ではない。

 相場形成を先導する自動車業界では、トヨタ自動車労組が全組合員平均の賃上げ要求額を前年比1割減とし、ホンダやマツダの労組もベア要求を見送る方向だ。

 旅客需要が激減した航空や鉄道関係の労組からは、雇用維持を優先したい姿勢がうかがえる。

 デジタルやエネルギーなど事業構造が多様化する電機業界はコロナ禍で受ける影響が企業ごとに異なり、従来のような統一交渉が難しくなるとも指摘される。

 大手産別幹部が「全業種で同じように闘うのは難しい」と言うように、春闘への対応は、これまでとは違うものになりそうだ。

 ただ、労働者の収入減は日本経済に重い足かせとなっている。

 基本給や残業代を合わせた昨年4~11月の現金給与総額は前年同月比で8カ月連続下落した。

 ここで賃金抑制の流れが強まれば消費がさらに低迷し、経済回復も遠のく。賃上げの流れを切らさないことが重要ではないか。

 非正規労働者の苦境にも目を向ける必要がある。昨年3月以降、パートやアルバイトを中心に多くの人が職を失っている。同一労働同一賃金の制度が導入されても、非正規の不安定な立場が変わっていないことを浮き彫りにした。

 連合は、正社員と非正規の格差是正も春闘の方針に掲げている。見過ごしにしてはなるまい。

 テレワークなど柔軟な働き方もテーマになる。労働環境の改善についても目配りが求められる。