最悪の事態は回避され、ひとまず胸をなでおろした。

 米国とロシアが、新戦略兵器削減条約(新START)の5年延長で合意した。米ロに残された唯一の核軍縮条約だ。期限切れが来月5日に迫っていた。

 バイデン米大統領が新政権発足でさっそく打ち出した。この合意を機に米ロは議論の場に立ち返り、核軍縮を進めてもらいたい。

 新STARTは、配備戦略核弾頭数を1550、大陸間弾道ミサイル(ICBM)などの運搬手段総数を800に制限している。米ロ核軍縮史上で最低水準だ。

 期限切れで失効すれば、両国の核開発を規制する法的枠組みはなくなり、軍拡競争に発展することも考えられた。ぎりぎりで歯止めがかかった格好だ。

 そもそもは米国のトランプ前政権が逆行させていた。核軍縮の枠組みに軍事大国化する中国を加えるべきとしたため、ロシアとの2国間交渉は暗礁に乗り上げた。米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約から一方的に離脱し、欧米とロシア間の偵察機による相互監視を認めた条約も脱退した。

 軍縮重視のバイデン政権はまず、これらを復活させるためロシアと協議する必要があろう。

 バイデン氏は、オバマ元大統領の「核なき世界」をめざす方針を継承するとしている。副大統領の時に関わっていただけに、理想に終わらせず、実現に向け一歩踏み出す使命があるはずだ。

 米ロは二大核兵器国であり、信頼醸成の仕組みが欠かせない。さらに中国を入れた核削減の枠組み作りを議論する時が来ている。

 北朝鮮の核開発など、核を巡る危うい状況は世界に広がっている。米ロが核軍縮への機運を高めれば、他の核保有国にも良い影響を及ぼすだろう。両国の責任は大きい。

 核保有5大国の核軍縮義務を定めた核拡散防止条約(NPT)は実効性を示せていない。8月に予定される再検討会議に、バイデン政権がどう臨むのか注目したい。

 一方で、核の脅威を訴える多くの国が参加して核兵器禁止条約が今月発効した。核保有国は加わらず、戦争被爆国の日本も不参加で、締約国会議へのオブザーバー参加にも消極的だ。

 核保有国と非保有国の溝が深まるようではいけない。米ロなど保有国もオブザーバー参加して、核兵器への厳しい国際世論に触れるべきだ。核軍縮にとどまらず、核廃絶への道筋をさぐってほしい。